汚名返上
読み方:おめいへんじょう
「汚名返上」の意味
悪い評判や不名誉な評価を、新たな成果や行動によって取り除くことです。
「汚名返上」の語源・由来
「汚名」は不名誉な評判、「返上」は、もともと受け取ったものを相手に返すことをへりくだっていう語です。
「返上」は古くから使われ、のちには地位や権利などを手放す場合にも用いられるようになりました。
「汚名返上」では、好ましくない評判を自分が受けたもののように捉え、それを返して身から離すという表現になっています。
中国古典の特定の故事から生まれた故事成語ではなく、日本語の中で「汚名」と「返上」が結びついたものです。
「汚名返上」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「汚名返上を〜」
後ろに「果たす」「目指す」「期す」などを続けます。「汚名返上を果たす」「汚名返上を期す」などの形です。 - 「汚名返上の〜」
後ろに「機会」「好機」「一戦」などを続けます。「汚名返上の好機」「汚名返上の一戦」などと使います。 - 「汚名返上に〜」
後ろに行動を表す言葉を続けます。「汚名返上に挑む」「汚名返上に乗り出す」などの形です。 - 「汚名を返上する」
「汚名」と「返上」の間に助詞を入れた形も広く使われます。「弱小の汚名を返上する」「失敗続きの汚名を返上する」などと続けます。
「汚名返上」の例文
- 前回の大会で最下位に終わったチームは、今季の優勝で汚名返上を果たした。
- 品質問題で批判を浴びた会社は、再発防止策を徹底して汚名返上に取り組んでいる。
- 決勝戦は、守備のミスが続いていた彼にとって汚名返上の好機となった。
「汚名返上」の類似表現
名誉挽回(めいよばんかい)
失った名誉や評価を取り戻すことをいいます。
悪い呼び名や評判を取り除く側から述べる「汚名返上」に対し、「名誉挽回」は失われた名誉を取り戻す側から述べる表現です。
名誉回復(めいよかいふく)
傷ついた名誉や社会的評価を回復することです。
本人の成果だけでなく、調査や再審、後世の再評価などによって評価が改められる場合にも使われます。
「汚名返上」の古い用例
国立国会図書館の資料を用いたNDL Ngram Viewerの調査では、「汚名を返上」の用例は1935年から現れ、1940年代後半になると使用が増え始めます。
戦前にはまだ用例の少ない言い回しでした。
村上しほり・梅宮弘光による『神戸新聞』の全紙面調査では、1946年(昭和21年)11月26日付の記事見出しとして
「明るくなった三宮自由市場 いまでは完全に闇市の汚名返上」
が記録されています。
この例では「汚名返上」が「闇市の」に続く名詞として使われており、戦後間もない時期には現在につながる「〜の汚名返上」という形が見られます。
「汚名返上」の間違いやすい使い方・表記
「汚名挽回」は、「汚名返上」と「名誉挽回」が混ざった誤りとして避けるよう説明されることがあります。
文化庁の平成16年度「国語に関する世論調査」でも、「汚名返上」を「本来の言い方」として調査しています。
ただし、「挽回」には悪くなった状態を元に戻すという使い方があり、「汚名挽回」を単純な混同による誤用とみなす考え方には、国語学の研究から異論も出ています。
そのため、「汚名挽回」は歴史的にも成立しない誤りだ、と一律に断定するのは適切ではありません。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「汚名返上」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
- 佐々木文彦「言葉の誤用再考―汚名挽回を例に―」『明海日本語』第9号、明海大学日本語学会、2004年、9~19頁。
- 森田康夫「NDL Ngram Viewerを使ってみました 第1回 辞書編集の立場から」『国立国会図書館月報』749・750号、2023年。
- 村上しほり・梅宮弘光「戦後神戸におけるヤミ市の形成と変容―『三宮自由市場』の事例を中心に―」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』第4巻第2号、2011年、69~81頁。
- 文化庁「平成16年度『国語に関する世論調査』の結果について」、2005年。
