平衡感覚
読み方:へいこうかんかく
「平衡感覚」の意味
「平衡感覚」とは、身体の位置や動きを感じ取り、姿勢やつりあいを保つための感覚です。
比喩的には、物事を一方に偏らず、全体のつりあいを考えて判断する感覚も指します。
「平衡感覚」の語源・由来
「平衡」と「感覚」を組み合わせた語です。
中国古典の故事をもとにした成語ではなく、身体の平衡に関係する専門語として使われ、そこから判断や考え方についての比喩的な用法にも広がりました。
現在の四字の形がいつ成立したかは明確ではありませんが、大正時代にはすでに心理学の用語として使われていました。
「平衡感覚」の使い方
次のような形で使われます。
- 「平衡感覚が優れている/鈍い」
身体の能力について述べるときに使います。「平衡感覚が優れた選手」「平衡感覚が鈍る」などの形です。 - 「平衡感覚を失う」
めまいや揺れなどによって身体のつりあいが取りにくくなった場面で使います。「急に平衡感覚を失う」などと表します。 - 「平衡感覚に富む/欠ける」
考え方や判断について使う形です。「平衡感覚に富む論評」「平衡感覚に欠ける見方」などと使います。
「平衡感覚」の例文
- 船が大きく揺れた瞬間、彼は平衡感覚を失い、近くの手すりにつかまった。
- 彼女は不安定な足場でも平衡感覚が優れており、姿勢を崩さずに進んでいった。
- その評論家は対立する双方の意見に目を配る平衡感覚に富み、一面的な論じ方を避けている。
「平衡感覚」の類似表現
バランス感覚(ばらんすかんかく)
多くの場面で「平衡感覚」と言い換えられます。
特に、考え方、人間関係、仕事の配分などについては「バランス感覚」が広く使われます。
平衡覚(へいこうかく)
身体の位置や運動を感じ取る生理的な意味では、ほぼ同じです。
「平衡覚」は主に医学や生理学で使われ、判断や考え方についての比喩には「平衡感覚」が用いられます。
「平衡感覚」の古い用例
金子琅玕『心理学講話―一般常識』(1922年)の目次には、「平衡感覺」という項目が125ページに掲げられています。
「覺」は「覚」の旧字体で、大正11年にはすでに心理学で感覚の一種を表す名称として使われていたことが分かります。
福田恆存は1947年に文芸評論集『平衡感覺』を刊行しています。
身体についての専門書ではなく文芸評論集の題名に用いられている点から、この時期には専門分野を離れた用い方も見られたことが分かります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「平衡感覚」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「平衡感覚」項。
- 金子琅玕『心理学講話―一般常識』文誠社出版部、1922年。
- 国立国会図書館『日本人とはなにか―宛名のない手紙』書誌情報。
- CiNii Books「文藝評論集:平衡感覺」書誌情報。
