読み方:えんりょえしゃく

「遠慮会釈」の意味

慎みや礼儀、相手への気配りを意味する言葉です。

多くは「遠慮会釈もない」「遠慮会釈もなく」という否定の形で、相手に配慮したり手加減したりせず、強く行動する様子を表します。

人の言動だけでなく、風雨などの激しさについて使うこともあります。

「遠慮会釈」の語源・由来

「遠慮」と「会釈」という、相手への慎みや配慮にかかわる二つの語を重ねた表現です。

このうち「会釈」は、もとは仏教語「和会通釈(わえつうしゃく)」の略です。

異なって見える教えを照らし合わせ、矛盾しないように意味を明らかにすることを指しました。

そこから、さまざまな事情を考え合わせること、相手に気を配って応対することなどへ意味が広がりました。

「遠慮」は本来、遠い将来まで考えをめぐらすことを意味しましたが、日本語では古くから、人に対して言動を慎み控える意味でも使われています。

「遠慮会釈」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「遠慮会釈もなく〜」
    後ろに動作を続けます。「遠慮会釈もなく批判する」「遠慮会釈もなく踏み込む」などの形です。「も」を入れず、「遠慮会釈なく〜」ともいいます。
  • 「遠慮会釈のない〜」
    後ろに「物言い」「追及」「態度」などを続けます。「遠慮会釈のない追及」「遠慮会釈のない態度」などと使います。

「遠慮会釈」の例文

  • 記者たちは責任者に対して、遠慮会釈もなく厳しい質問を浴びせました。
  • 夜になると北風が遠慮会釈なく吹きつけ、古い窓が何度も大きな音を立てました。
  • 相手の事情を考えない彼の遠慮会釈のない言い方に、会議室の空気が険しくなりました。

「遠慮会釈」の類似表現

傍若無人(ぼうじゃくぶじん)

周囲の人を気にせず、勝手に振る舞う態度を表します。

「傍若無人な振る舞い」のように、その人の態度そのものを強く非難するときに向いています。

無遠慮(ぶえんりょ)

人への気兼ねや慎みがないことを表します。

「無遠慮な質問」「無遠慮に入り込む」のように使え、「遠慮会釈もない」より短く直接的な表現です。

「遠慮会釈」の古い用例

近松門左衛門の浄瑠璃『大経師昔暦』は正徳5年(1715)に初演された作品で、

「遠慮ゑしゃくもなふ」

という用例があります。

18世紀初めには、現在と同じく否定を伴う形が使われていたことが分かります。

宝暦3年(1753)刊の談義本『当風辻談義』には、

「遠慮会釈もあらばこそ」

とあります。

この用例では「会釈」まで漢字で記されており、江戸中期には現在と同じ「遠慮会釈」の表記が見られます。

「遠慮会釈」の間違いやすい使い方・表記

「遠慮会釈なく」は、好意的に「気兼ねせずに」という意味で勧める言い方には向きません。

たとえば、客に食事を勧めるなら「遠慮なく召し上がってください」とします。

「遠慮会釈なく」とすると、配慮や手加減をせずに振る舞うというきつい含みが加わります。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「遠慮会釈」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「遠慮会釈」「遠慮会釈も無い」項。
  • 新纂浄土宗大辞典編纂委員会編『新纂浄土宗大辞典』「会釈」項。
  • 大谷大学「生活の中の仏教用語 会釈」。
  • 日本芸術文化振興会「文化デジタルライブラリー 近松門左衛門」。
ABOUT ME
北澤篤史
四字熟語・漢字熟語・ことわざ・慣用句・故事成語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。ことわざ学会理事。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。