暗中模索
読み方:あんちゅうもさく
「暗中模索」の意味
手がかりや見通しがない中で、方法や答えを探し続けることです。
単に事情が分からないだけでなく、分からないなりに考えたり試したりしている様子を含みます。
「暗中模索」の語源・由来
「暗中模索」は、唐代の劉餗が著した『隋唐嘉話』巻中に見える言葉に基づきます。
原典では、現在の日本語表記とは一字異なる「暗中摸索」となっています。
『隋唐嘉話』には、唐の許敬宗が人をなかなか覚えないことをとがめられた際の話があります。
許敬宗は、何・劉・沈・謝のような優れた人物であれば、
「若遇何、劉、沈、謝、暗中摸索著、亦可識。」
と答えました。
暗闇の中で手探りしても見分けられる、という趣旨です。
ここで使われた「暗中摸索」が、のちに暗がりで手探りすることから、手がかりのない状況で探り求めることを表すようになりました。
四字の句そのものは「暗中摸索」として原典にありますが、日本語では「摸」の代わりに「模」を用いた「暗中模索」が広く使われています。
「暗中摸索」も異表記として用いられます。
「暗中模索」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「暗中模索する」
人や組織が、まだ定まっていない方法や方針を探るときに使います。「解決策を求めて暗中模索する」「新分野で暗中模索する」などの形です。 - 「暗中模索の〜」
後ろに「状態」「時期」「段階」などを続けます。「暗中模索の状態」「暗中模索の時期」などと使います。 - 「暗中模索を続ける」
探る過程がある程度の期間続いていることを示します。「研究班は暗中模索を続ける」「チームで暗中模索を続ける」などの形です。
「暗中模索」の例文
- 新しい制度には前例がなく、担当部署は暗中模索しながら運用方法を整えていった。
- 実験結果が予想と合わず、研究チームは数か月にわたって暗中模索を続けた。
- 初めて店を任されたころは、客を増やす方法も分からず、しばらく暗中模索の状態だった。
「暗中模索」の類似表現
五里霧中(ごりむちゅう)
事情や方向が分からず、どうすればよいか迷っている状態について使われます。
「五里霧中だ」「五里霧中に陥る」のような形が多く見られます。
試行錯誤(しこうさくご)
実際にさまざまな方法を試し、失敗や修正を重ねながら解決へ近づいていく過程を表します。
試みと失敗を繰り返していることを具体的に示したい場面に向く表現です。
「暗中模索」の古い用例
島村抱月が1906年に『早稲田文学』へ発表した評論「囚はれたる文芸」には、
「我が情は闇中摸索の妄飛躍をば嫌へども」
とあります。
ここでは「暗中模索」ではなく「闇中摸索」と表記されており、20世紀初めの日本語では現在と異なる字を用いた例があったことが分かります。
正宗白鳥の小説『他所の恋』(1939~1940年)には
「暗中模索の態度」
という形があり、この時期には現在と同じ「暗中模索」の表記が文学作品で使われています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「暗中模索」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「暗中模索」項。
- 劉餗撰、程毅中点校『隋唐嘉話』中華書局、1997年。
- 島村抱月「囚はれたる文芸」『早稲田文学』復刊第1号、1906年。
- 正宗白鳥「他所の恋」、1939~1940年。
