独立独歩
読み方:どくりつどっぽ
「独立独歩」の意味
他人に頼らず、自分で考え、自分の信じる道を自分の力で進むことです。
また、他とはっきり異なる特色を持ち、同列に扱えないことを表す場合もあります。
「独立独歩」の語源・由来
「独歩」は古くから使われてきた語で、中国・南宋の禅僧、無門慧開が編んだ『無門関』の自序にも見られます。
そこには
「大道無門 千差有路 透得此關 乾坤獨歩」
とあり、「独歩」は何ものにも妨げられず天地を進むという文脈で用いられています。
ただし、『無門関』に現在の「独立独歩」という四字の並びがあるわけではありません。
「独歩」の典拠の一つではありますが、『無門関』を「独立独歩」そのものの直接の出典とすることはできません。
「独立独行」というよく似た表現は日本でも古く、清原国賢による1530年の『荘子抄』に
「独立独行したなりぞ」
とあります。
これに対して、「独立独歩」の四字形がいつ成立したのか、その詳しい経緯は明らかではありません。
「独立独歩」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「独立独歩の〜」
後ろに「精神」「姿勢」「方針」「道」などを続けます。「独立独歩の精神」「独立独歩の方針」などの形です。 - 「独立独歩で〜」
後ろに行動を表す言葉を続けます。「独立独歩で進む」「独立独歩で事業を築く」などと使います。 - 「独立独歩を貫く」
周囲に頼りきらず、自分の考えに従う姿勢を続ける場合に使います。「経営方針として独立独歩を貫く」などの形です。
「独立独歩」の例文
- 祖父は誰かの後ろ盾を求めず、独立独歩の精神で小さな会社を育ててきました。
- 周囲から何度反対されても、彼女は独立独歩を貫き、自分が必要だと思う研究を続けました。
- 他社との提携に頼らず、長年独立独歩で歩んできた企業が、新しい市場への進出を決めました。
「独立独歩」の類似表現
独立独行(どくりつどっこう)
意味はほぼ同じで、多くの場面で言い換えられます。
「独立独行」は日本語でも「独立独歩」より古い用例が知られています。
独立不羈(どくりつふき)
「不羈」は束縛されないことです。
「独立不羈」は、他から制御や干渉を受けないという面をはっきり示したいときに使われます。
「独立独歩」を構成する言葉の意味
「独立」は、他から束縛や支配を受けず、自分の力で行動することです。
日本語では江戸時代の文献にもこの意味の用例があります。
「独歩」は、もともと一人で歩くことをいい、そこから独力で物事を行うことを表すようになりました。
さらに、「他に比べるものがないほど優れている」という意味も古くからあり、「独立独歩」が持つ「他に並ぶものがない」という意味にも関係しています。
「独立独歩」の古い用例
福沢諭吉の『福翁自伝』には、
「唯独立独歩と安心決定したから」
とあります。
この部分では、政府や役人を頼らず、自分自身を独立の手本にしようとする福沢の生き方について述べられています。
『福翁自伝』は『時事新報』に1898年から1899年にかけて連載され、単行本は1899年に刊行されました。
国語資料では、この1899年の例が「独立独歩」の早い用例として採られています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「独立独歩」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
- 福沢諭吉『福翁自伝』時事新報社、1899年。
- 国立国会図書館レファレンス協同データベース「無門慧開禅師による『無門関』序文冒頭の『大道に門無く、千差道有り。此の関を透得せば、乾坤に独歩せん』を白文で書くとどうなるか」。
