過剰防衛
読み方:かじょうぼうえい
「過剰防衛」の意味
急迫不正の侵害に対して自己または他人の権利を守るために行った反撃が、防衛として許される程度を超えた場合をいいます。
刑法36条2項では、こうした行為について、情状により刑を減軽または免除できると定めています。
「過剰防衛」の語源・由来
「過剰防衛」は、中国古典の故事に由来する表現ではなく、近代日本の刑法学や法実務で使われるようになった法律用語です。
刑法36条2項には「過剰防衛」という語そのものはなく、「防衛の程度を超えた行為」と規定されています。
昭和5年(1930)の第58回帝国議会では、「過剰防衞」「過剩防衞」「超過防衞」などの語形が使われています。
遅くともこの時期には、刑法36条2項に関係する概念を表す名称として「過剰防衛」に相当する語が法的な議論で用いられていました。
現在の四字の形が最初に成立した時期までは明らかではありません。
「過剰防衛」の使い方
次のような形で使われます。
- 「過剰防衛に当たる」
反撃について法的な評価を示すときに使います。「反撃が過剰防衛に当たる」などの形です。 - 「過剰防衛が成立する」
裁判や法律上の議論で、その行為に刑法36条2項が適用されるかを述べるときに使います。「過剰防衛が成立する余地」などと続けます。 - 「過剰防衛を主張する」
被告人や弁護側などが、行為の法的な扱いについて述べる場合に使います。「弁護側が過剰防衛を主張する」などの形です。
「過剰防衛」の例文
- 相手の攻撃を止めるための反撃だったが、裁判所は過剰防衛が成立すると判断した。
- 弁護側は、被告人の行為について過剰防衛による刑の減軽を求めた。
- 争点は、反撃が正当防衛の範囲に収まるのか、それとも過剰防衛に当たるのかという点だった。
「過剰防衛」の類似表現
過剰避難
読み方:かじょうひなん
緊急避難として行った行為が許される程度を超えた場合を指します。
刑法37条に関係する言葉で、不正な攻撃への「防衛」ではなく、生命・身体・自由・財産などに対する現在の危難を避ける行為を扱う点が異なります。
誤想防衛
読み方:ごそうぼうえい
現実には急迫不正の侵害がないのに、あると誤って考えて防衛行為に出ることをいいます。
侵害があると誤認したことが問題になるため、反撃の程度を扱う過剰防衛とは区別されます。
「過剰防衛」の古い用例
昭和5年(1930)5月9日の第58回帝国議会・衆議院「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律案委員会」では、
「三十六條ノ所謂過剰防衞」
という表現が使われています。
同じ会議では「過剩防衞」「超過防衞」という形も見られ、当時は表記や呼び方に揺れがあったことが分かります。
昭和24年(1949)4月5日の最高裁判所第三小法廷判決では、
「これを以て過剰防衛と認めることは違法とはいえない」
とあり、現在と同じ「過剰防衛」の表記が判決文で使われています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「過剰防衛」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「過剰防衛」項。
- 『刑法』(明治四十年法律第四十五号)第三十六条。
- 第58回帝国議会衆議院「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律案委員会」第3号、1930年5月9日。
- 最高裁判所第三小法廷判決、1949年4月5日、刑集3巻4号421頁。
