直立不動
読み方:ちょくりつふどう
「直立不動」の意味
「直立不動」とは、かかとをそろえてまっすぐに立ち、身動きをしないことです。
人が姿勢を正して静止している状態を指し、文脈によっては緊張して体を固くしている様子も表します。
「直立不動」の語源・由来
「直立不動」は、中国古典の特定の故事や文章を出典とする語とは確認されておらず、近代日本の体操・教練で使われた姿勢名との関係を示す資料があります。
永井道明の『学校体操要義』(1913年)を引用した体育史研究では、体操でいう「直立姿勢」と、歩兵操典でいう「不動の姿勢」を合わせて、「直立不動の姿勢」とも呼べると説明されています。
歩兵操典に「不動ノ姿勢」という名称が用いられていたことも軍事資料から分かります。
これらは「直立不動」という語の形成過程を考えるうえで重要ですが、1913年の記述が最初の造語例であるか、現在の四字形がいつ固定したかまでは明らかではありません。
「直立不動」の使い方
次のような形で使われます。
- 「直立不動の姿勢をとる/保つ」
後ろに「姿勢」を続け、「直立不動の姿勢をとる」「直立不動の姿勢を保つ」などと使います。 - 「直立不動で〜」
後ろに動作を続けます。「直立不動で待つ」「直立不動で話を聞く」などの形です。 - 「直立不動のまま〜」
姿勢を崩さずに一定の時間を過ごす場面で、「直立不動のまま待つ」のように使います。
「直立不動」の例文
- 表彰状が読み上げられる間、受賞者は直立不動の姿勢を保っていました。
- 部長に突然呼び止められた新人は、直立不動で説明を聞いていました。
- 試合前の黙禱が始まると、選手たちは直立不動のまま静かに目を閉じました。
「直立不動」の古い用例
高村光太郎の詩「或る宵」を収めた1914年刊の詩集『道程』には、
「直立不動の姿勢の事だ」
という形が見られます。
ここでは単なる姿勢の説明ではなく、礼服などと並べて、形式を重んじる社会のあり方を描く言葉として使われています。
芥川龍之介の『路上』では、1919年の『大阪毎日新聞』連載時に、少年が
「いきなり直立不動の姿勢をとって」
挙手の礼をする場面があります。
「直立不動の姿勢をとる」という、現代にも続く形が当時の文学作品ですでに用いられていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「直立不動」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「直立不動」項。
- 清水諭「日本における体操―体育の展開と嘉納治五郎」『平成22年度 日本体育協会スポーツ医・科学研究報告Ⅲ 日本体育協会創成期における体育・スポーツと今日的課題―嘉納治五郎の成果と今日的課題―』財団法人日本体育協会、2011年、37~54頁。
- 高村光太郎『道程』抒情詩社、1914年。
- 芥川龍之介「路上」『大阪毎日新聞』1919年6月30日~8月8日。
