正正堂堂
読み方:せいせいどうどう
「正正堂堂」の意味
態度や手段が正しく立派で、卑怯なことをしないさまを表します。
「正正堂堂」の語源・由来
もとになったのは、中国の兵法書『孫子』「軍争篇」の
「無邀正正之旗、無擊堂堂之陣」
という一節です。
「正正之旗」は旗や隊列が整った軍勢、「堂堂之陣」は陣容が堂々として勢いのある軍勢を指し、そのような強い敵を正面から攻撃してはならないと説いています。
『孫子』の原文には、「正正堂堂」という四字が一続きで置かれているわけではありません。
「正正之旗」と「堂堂之陣」という別々の句から「正正」「堂堂」を取り合わせ、後世に四字の形として定着した表現です。
四字形がいつ初めて作られたかは明確ではありません。
ただし、明代に成立した『皇明經世文編』には「正正堂堂」という連続した語形が見られるため、少なくとも明代には現在と同じ四字形が中国で用いられていました。
後世には軍勢の形容から離れ、正しく隠し立てのない態度をいう意味にも広がっています。
「正正堂堂」の使い方
次のような形がよく使われます。
- 「正正堂堂と〜」
後ろに「戦う」「勝負する」「挑む」「主張する」などを続けます。「正正堂堂と戦う」「正正堂堂と意見を述べる」などの形です。 - 「正正堂堂たる〜」
後ろに「態度」「振る舞い」「姿」などを続けます。文章語として「正正堂堂たる態度」のように使われます。 - 「正正堂堂として〜」
人の振る舞いについて、「正正堂堂としてもらいたい」のように使うことがあります。
「正正堂堂」の例文
- 選手たちは反則に頼らず、最後まで正正堂堂と戦い抜きました。
- 厳しい質問から逃げない彼の正正堂堂たる態度は、多くの人から評価されました。
- 意見が対立しても、裏で相手をおとしめるのではなく、正正堂堂と公開の場で議論すべきです。
「正正堂堂」の類似表現
公明正大(こうめいせいだい)
「公明正大」は、私心がなく、公平で良心に恥じるところがないことをいいます。
「正正堂堂」は勝負や競争、対立する相手とのやり取りで「正正堂堂と戦う」のように使われることが多いのに対し、「公明正大」は人物の心構え、判断、制度、処置などにも広く使えます。
「正正堂堂」の古い用例
田口卯吉『日本開化小史』巻五(1877~1882年)には、
「武田氏の兵は正々堂々以て敵に向ひ」
という用例があります。
ここでは武田氏の軍勢の戦い方を述べており、『孫子』につながる軍事的な意味で使われています。
坪内逍遙『内地雑居未来之夢』第五(1886年)には、
「可厭だ。正々堂々でなくては」
とあります。
この例では軍隊ではなく、人の態度や行いを評価する言葉として用いられており、明治10年代には現在につながる用法が日本語に定着し始めていたことが分かります。
「正正堂堂」の間違いやすい使い方・表記
「正々堂々」とも書きます。
「々」は直前の漢字を繰り返す記号なので、「正々堂々」と「正正堂堂」は同じ四字熟語を表す表記です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「正正堂堂」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「正正堂堂」項。
- 『孫子』「軍争篇」。
- (明)陳子龍等編『皇明經世文編』。
- 中華民国教育部『重編國語辭典修訂本』「正正堂堂」項。
