読み方:そくさいえんめい

「息災延命」の意味

災難を免れ、命を長く保つこと、またそれを願う言葉です。

病気だけでなく、さまざまな災いを避けて長寿を得るという意味を持ちます。

「息災延命」の語源・由来

「息災」はもともと仏教語で、サンスクリット語の「シャーンティカ」の訳語です。

「息」には「とどめる」という意味があり、密教では災害・病気などの災いを消滅させる修法を「息災法」といいます。

「延命」は寿命を延ばすことで、日本では『続日本紀』天平勝宝七年(755)にすでに用例があり、密教にも寿命を延ばすことを願う「延命法」があります。

「息災延命」は、災いを除く「息災」と、寿命を延ばす「延命」を組み合わせた祈願語です。

現在の四字の順序がいつ成立したのかは明確ではありません。

「息災延命」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「息災延命を〜」
    後ろに「祈る」「願う」「祈願する」などを続けます。「息災延命を願う」「息災延命を祈る」などの形です。
  • 「息災延命の〜」
    後ろには「祈願」「祈祷」などを続けます。「息災延命の祈願」のように使います。
  • 「家内安全・息災延命」のように並べる
    神社や寺院で、ほかの祈願語と並べて掲げることがあります。

「息災延命」の例文

  • 祖父母の息災延命を願って、家族で寺に参拝しました。
  • 春の大祭では、地域の安寧と息災延命の祈願が行われます。
  • 願文には、家内安全、息災延命、五穀豊穣が順に記されていました。

「息災延命」の類似表現

延命息災(えんめいそくさい)

意味はほぼ同じで、多くの場面で言い換えられます。

「息災」と「延命」の順序を逆にした形で、『宇津保物語』「春日詣」には「ゑんめいそくさい」という古い用例があります。

誤った語順ではなく、古くから使われている表現です。

無病息災(むびょうそくさい)

病気をせず、健康であることを表す言葉です。

「息災延命」には長寿を願う「延命」が明示されているため、長生きまで含めて祈願するときには「息災延命」が適しています。

「息災延命」の古い用例

平安時代の漢文集『本朝文粋』巻十三には、大江匡衡が作った「於尾張国熱田社供養大般若経願文」が収められており、その中に、

復誓護左府殿下。息災延命。千秋万歳

とあります。

日本人が作成した願文の中で、現在と同じ「息災延命」という四字の語形が使われている古い例です。

『本朝文粋』は11世紀中頃に成立したとされ、この時期までには「息災延命」が祈願の語として文献上に現れていたことが分かります。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「息災延命」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「息災延命」「息災」「延命」「延命息災」項。
  • 小学館『日本大百科全書』「息災」項。
ABOUT ME
北澤篤史
四字熟語・漢字熟語・ことわざ・慣用句・故事成語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。ことわざ学会理事。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。