傍若無人
読み方:ぼうじゃくぶじん
「傍若無人」の意味
「傍若無人」とは、人前をはばからず、周囲の人を気にかけないで勝手に振る舞うことです。
多くは、他人への配慮を欠いた態度や言動を批判するときに使います。
「傍若無人」の語源・由来
「傍若無人」は、中国の歴史書『史記』巻八十六「刺客列伝・荊軻」に見える表現に由来します。
荊軻は燕の町で高漸離らと酒を飲み、酒が回ると、高漸離が「筑」という楽器を奏で、荊軻がそれに合わせて歌っていました。
楽しんだあとには互いに泣き、その様子を『史記』は
「相樂也、已而相泣、旁若無人者」
と記しています。
「旁若無人」は、そばに人がいないかのようだという表現です。
原典には「旁若無人」の四字が実際にあります。
日本語で一般的な「傍若無人」とは最初の一字が異なりますが、「旁」と「傍」はともに「かたわら・そば」の意味で通用する字です。
原典では場面を描写する句でしたが、のちに人物の振る舞いを評する成語として使われるようになりました。
「傍若無人」の使い方
次のような形で使われます。
- 「傍若無人な〜」
後ろに「態度」「振る舞い」「言動」「人物」などを続けます。「傍若無人な態度」「傍若無人な言動」などの形です。 - 「傍若無人に〜」
後ろに動作を続けます。「傍若無人に振る舞う」「傍若無人に話し続ける」などと使います。 - 「〜は傍若無人だ」
人物やその態度について、直接評価する形です。 - 「傍若無人ぶり」
「傍若無人ぶりが目立つ」「傍若無人ぶりを見せる」など、普段の振る舞い方を取り上げるときに使います。
「傍若無人」の例文
- 会議で人の話を最後まで聞かず、勝手に議題を変えていく彼の態度は傍若無人だ。
- 試合後、一部の観客が傍若無人に通路へ広がり、係員が何度も移動を求めた。
- 家族の予定を相談もなく変更する兄の傍若無人ぶりに、みんなが困っている。
「傍若無人」の類似表現
厚顔無恥(こうがんむち)
恥ずべきことを恥と思わない厚かましさを表す言葉です。
他人への遠慮のない行動そのものより、「恥を知らない」という点を強く表します。
傲岸不遜(ごうがんふそん)
いばり返って人を見下し、へりくだろうとしない態度を表します。
人を軽く見る傲慢さを強く示す点で使い分けられます。
「傍若無人」の古い用例
平安時代末の公家・藤原宗忠の日記『中右記』保安元年(1120)七月二十二日条には、藤原宗通について
「天下之権威傍若無人也」
と記されています。
日本の漢文体の文献で、「傍若無人」という現在と同じ四字表記がすでに使われていた早い例です。
14世紀後半成立の『太平記』巻十には
「傍若無人の振舞せられたるも理り哉」
とあり、「傍若無人の振舞」という「の」で名詞につなぐ形が中世に使われていたことが分かります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「傍若無人」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「傍若無人」項。
- 司馬遷『史記』巻八十六「刺客列伝・荊軻」。
- 中華民國教育部『成語典』2020年、「旁若無人」項。
- 東京大学史料編纂所『東京大学史料編纂所報』第31号(1995年度)、「大日本史料第三編之二十四」。
