冠婚葬祭
読み方:かんこんそうさい
「冠婚葬祭」の意味
「冠婚葬祭」とは、成人、結婚、葬儀、祖先の祭りを代表とする、人生の節目に行われる儀礼の総称です。
現在では範囲を広げ、結婚式や葬式などの慶弔にかかわる行事全般を指すこともあります。
「冠婚葬祭」の語源・由来
「冠婚葬祭」のもとには、中国で古くから行われてきた「冠」「昏」「喪」「祭」という礼があります。
『礼記』「礼運」には、
其行之以貨力辞譲飲食冠昏喪祭射御朝聘
とあり、「冠昏」「喪祭」は「射御」「朝聘」などとともに、礼を実際に行う場面として挙げられています。
ここでは現在の「冠婚葬祭」という表記の四字熟語が独立して示されているわけではありません。
南宋の朱熹の語録をまとめた『朱子語類』巻八十九には、
「問冠昏喪祭何書可用」
とあり、「冠昏喪祭」の四字が一まとまりで使われています。
現在一般的な表記では、「昏」が「婚」、「喪」が「葬」となっています。
「冠婚葬祭」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「冠婚葬祭の〜」
後ろに「マナー」「服装」「費用」「しきたり」などを続けます。「冠婚葬祭のマナー」「冠婚葬祭の費用」などの形です。 - 「冠婚葬祭に〜」
後ろに「備える」「対応する」などを続けます。「冠婚葬祭に備える」「冠婚葬祭に対応できる服装」などと使います。 - 「冠婚葬祭で〜」
儀式に参加する場面での行動や必要なものを続けます。「冠婚葬祭で着る」「冠婚葬祭で必要になる」などの形です。
「冠婚葬祭」の例文
- 社会人になったのを機に、冠婚葬祭に備えて礼服を一着用意した。
- 地域によっては、冠婚葬祭のしきたりが今も細かく受け継がれている。
- 祖母から、冠婚葬祭では相手や場面に応じた服装や言葉遣いが大切だと教わった。
「冠婚葬祭」の類似表現
慶弔(けいちょう)
祝い事と弔い事をまとめていう言葉です。
「慶弔休暇」「慶弔費」のように、制度や金銭に関する語と組み合わせる場合にもよく用いられます。
人生儀礼(じんせいぎれい)
誕生、成長、成人、結婚、死など、人の一生の節目に行われる儀礼を広く指す言葉です。
民俗学などでは、「冠婚葬祭」より広い範囲の行事を扱う場合があります。
「冠婚葬祭」を構成する言葉の意味
「冠」は、成人したことを示すため冠をつける冠礼を指します。
「婚」は婚礼、「葬」は死者を葬る儀礼、「祭」は祖先を祭る祭祀を指します。
古い文献では婚礼を「昏」と書きます。「昏」は夕暮れを表す字で、古代中国の婚礼が暮れ方に行われたことと関係する表記です。
「冠婚葬祭」の古い用例
江戸時代前期の中江藤樹『翁問答』には、
人倫の交、冠昏喪祭、飲食、軍陳等万事の天理儀則を……
と「冠昏喪祭」の形が使われています。
1650年の刊本があり、この時期の日本語では現在とは異なる「昏」「喪」の表記が用いられていたことが分かります。
永井荷風が昭和12年(1937年)4月に書いた「西瓜」には、
「姻戚の家に冠婚葬祭の事ある場合」
という一節があります。
この例では、現在と同じ「冠婚葬祭」の表記で、親族との付き合いに伴う儀礼をまとめて指しています。
「冠婚葬祭」の間違いやすい使い方・表記
古い形として「冠昏喪祭」があり、「冠昏葬祭」「冠婚喪祭」といった表記も見られます。
「昏」は婚礼に関する古い表記、「喪」は人の死に伴う喪の儀礼を表します。
現在は「冠婚葬祭」と書くのが一般的です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「冠婚葬祭」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「冠婚葬祭」項。
- 『礼記』「礼運」。
- 黎靖徳編『朱子語類』巻八十九「礼六」。
- 永井荷風「西瓜」(1937年4月稿)。
