女人禁制
読み方:にょにんきんせい
「女人禁制」の意味
「女人禁制」とは、特定の場所や行事について、女性の立ち入りや参加を禁じることです。
とくに寺院・霊場・修行場などの宗教的な禁制を指してきましたが、宗教以外の場所や集まりについても使われます。
「女人禁制」の語源・由来
「女人禁制」は、特定の中国古典の一句を直接の出典とする故事成語ではなく、日本の寺院や霊場などで行われた女性の立ち入り制限を表す語として使われてきました。
その歴史的背景については、僧侶が不淫戒を守るための寺院法制を基礎とみる研究があり、山岳に設けられた結界や、月経・出産などを「穢れ」とする観念も、時代や地域によって関わってきました。
女人禁制は日本だけに見られる慣行ではなく、寺院における男女の隔離という点では東アジアの仏教圏にも類例が指摘されています。
こうした慣行そのものは、「女人禁制」という現在の四字の語形が文献に現れる以前から存在していました。
そのため、制度の始まりと四字熟語としての成立時期は分けて考える必要があり、現在の語形がいつ作られたかは明確ではありません。
明治5年(1872年)には、太政官布告第98号「神社仏閣女人結界ノ場所ヲ廃シ登山参詣随意トス」が出され、神社・寺院の女人結界を廃止する方針が示されました。
ただし、その後も地域や霊場によっては女人禁制が続いた例があります。
「女人禁制」の使い方
次のような形で使われます。
- 「女人禁制の〜」
後ろに「寺」「霊場」「区域」「修行場」などを続けます。「女人禁制の霊場」などの形です。 - 「〜は女人禁制だ/だった」
場所や行事について、女性の立ち入りなどが禁じられている、または過去に禁じられていたことを述べます。 - 「女人禁制を敷く」
女性を立ち入り禁止とする決まりを設ける場合に使います。 - 「女人禁制を解く」
それまで設けられていた禁制をなくす場合に使います。
「女人禁制」の例文
- その山はかつて女人禁制で、女性は一定の場所より先へ入ることができませんでした。
- 長く続いていた女人禁制を解き、女性にも参拝の道が開かれました。
- この祭礼では、昔は一部の区域に女人禁制が敷かれていたと伝えられています。
「女人禁制」の類似表現
女人結界(にょにんけっかい)
「女人結界」は、女性の立ち入りを禁じるために区切られた区域や、その境界を設けることを指します。
「女人禁制」が禁止の決まりや制度そのものを広く表すのに対し、「女人結界」は場所の区切りを意識した語として使われることがあります。
ただし、両者を同じ意味で扱う資料もあります。
「女人禁制」の古い用例
16世紀初めごろの能『道成寺』には、現在と同じ「女人禁制」という四字の語形が見られます。
鐘供養を行う場面で、寺の住僧が「女人禁制にて有るぞ」と命じており、女性を入れない決まりを表す語として述語の形で使われています。
国語資料では1516年ごろの用例として挙げられています。
「女人禁制」の間違いやすい使い方・表記
「女人禁制」は「にょにんきんせい」と読みますが、「にょにんきんぜい」という読み方もあります。
「禁制」自体が古くは「きんぜい」と読まれていたためで、どちらの読みも認められています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「女人禁制」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「女人禁制」「女人結界」「禁制」項。
- 牛山佳幸『「女人禁制」の成立事情と歴史的意義をめぐる再検討』信州大学、2005年。
- 鈴木正崇『女人禁制』吉川弘文館、2002年。
- 日本名著全集刊行会編『日本名著全集 江戸文芸之部 第29巻 謡曲三百五十番集』日本名著全集刊行会、1928年。
- 文化庁「日本遺産 女性とともに今に息づく女人高野」。
