波及効果
読み方:はきゅうこうか
「波及効果」の意味
「波及効果」とは、ある物事から生じた影響が、直接関係する範囲だけにとどまらず、周囲や別の分野へ次第に広がっていくことです。
「効果」とあるため好ましい結果だけを指すようにも見えますが、「負の波及効果」のように、悪影響が広がる場合にも使われます。
「波及効果」の語源・由来
「波及効果」は、中国古典に現在と同じ四字の形で現れる故事成語ではありません。
「波及」と「効果」という二つの語から成る表現です。
「波及」は古く『春秋左氏伝』僖公二十三年に
「其波及晋国者」
という形で見えます。
ここでは、楚にある物資のうち晋にまで及ぶものについて述べています。
「波及」という語の古い例ではありますが、「波及効果」という四字句ではありません。
日本語の「波及」は1783年の『授業編』に用例があり、「効果」は中江兆民の『国会論』(1888年)に用例があります。
二語がそれぞれ使われるようになった後に「波及効果」という組み合わせが成立したとみられますが、現在の四字形がいつ作られたのかは明確ではありません。
「波及効果」の使い方
次のような形で使われます。
- 「〜の波及効果」
前には、影響の出発点となる物事を置きます。「公共投資の波及効果」「新技術の波及効果」などの形です。 - 「波及効果がある/生じる」
ある出来事から、別の分野にも影響が現れたことを述べるときに使います。 - 「波及効果をもたらす」
ある活動や変化が、周囲にも影響を生み出すことを述べます。 - 「波及効果を期待する」
政策、投資、イベントなどから、関連する地域や産業にも影響が及ぶことを見込む場合に使います。
「波及効果」の例文
- 新工場の建設による波及効果で、周辺の物流業や飲食店にも新たな需要が生まれました。
- 地元チームの優勝には、観光や小売業への波及効果も期待されています。
- 金融不安の波及効果によって、周辺国でも株価が大きく下落しました。
「波及効果」の類似表現
相乗効果(そうじょうこうか)
二つ以上の要素が組み合わさることで、それぞれを単独で用いた場合より大きな効果が生まれることです。
「波及効果」が影響の及ぶ先に注目するのに対し、「相乗効果」は複数の要素が互いの働きを高める点を問題にします。
連鎖反応(れんさはんのう)
一つの出来事が次の出来事を引き起こし、それがさらに次へ続いていくことです。
出来事が順番に連なっていく場合には、「連鎖反応」のほうが適しています。
「波及効果」の古い用例
1955年(昭和30年)の経済企画庁『年次経済報告』では、財政投融資について
「他の産業部門への波及効果の大きいもの」
と記されています。
同じ箇所には「投資の波及効果」という形もあり、投資による影響が別の産業へ及ぶことを表す経済用語として使われていました。
さらに1958年(昭和33年)には、鈴木雅次
「臨海工業地帯の開発による地域産業の波及効果分析」
という論文が『港湾』に掲載されています。
1950年代後半には、「波及効果」が地域開発や産業間の影響を分析する専門的な表現にも用いられていたことが分かります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「波及効果」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「波及」「効果」項。
- 『春秋左氏伝』僖公二十三年。
- 経済企画庁『昭和30年 年次経済報告』1955年。
- 鈴木雅次「臨海工業地帯の開発による地域産業の波及効果分析」『港湾』35巻7号、日本港湾協会、1958年。
