起死回生
読み方:きしかいせい
「起死回生」の意味
「起死回生」は、滅びかけているものや絶望的な状態にあるものを立て直し、再び勢いを取り戻すことを意味する四字熟語です。
単なる不調からの回復よりも、敗北や倒産などが迫る厳しい状況から大きく巻き返す場面に適しています。
「起死回生」の語源・由来
「起死」は死にかけたものを生き返らせること、「回生」は再び生へ戻すことです。
同じ方向の意味を持つ二つの語を重ねています。
この言葉の背景として挙げられるのが、中国の歴史書『史記』巻百五「扁鵲倉公列伝」に記された名医・扁鵲の話です。
虢の太子が死んだと思われたあと、扁鵲が治療を施すと太子は目を覚ましました。
そのため人々は扁鵲を「能く死人を生かす」と評しましたが、扁鵲自身は、死者を生き返らせたのではなく、もともと助かる人を起こしたのだと述べています。
『史記』のこの箇所に「起死回生」という四字そのものはありません。
四字の語形は、北宋の李昉らが978年にまとめた『太平広記』巻五十九「太玄女」に確認できます。
『女仙伝』から採られた話の中に、
「行三十六術甚效,起死回生,救人無數」
とあり、太玄女が術によって多くの人を救ったことが記されています。
資料によって「回」を「迴」とする表記もあります。
『太平広記』の成立時には四字の形が確認できますが、この記述はそれ以前の『女仙伝』からの引用とされているため、「起死回生」という語が初めて成立した年を978年と断定することはできません。
『史記』の扁鵲伝は意味の背景となる故事であり、四字の語形が実際に記された文献とは分けて考える必要があります。
人を死の淵から救う意味から、滅びかけた事業や不利な形勢を立て直す意味へと使われる範囲が広がりました。
「起死回生」の使い方
次のような形で使われます。
- 「起死回生の〜」
後ろに、状況を変える手段や行動を続けます。「起死回生の策」「起死回生の一手」「起死回生の一打」などの形です。 - 「起死回生を図る」
厳しい状況から立て直そうとするときに使います。「新事業で起死回生を図る」などと続けます。 - 「起死回生を遂げる」
実際に危機を乗り越え、立て直しに成功した場合に使います。「低迷から起死回生を遂げる」などの形です。
「起死回生」の例文
- 長く赤字が続いていた会社は、新商品の大ヒットによって起死回生を遂げました。
- 一点を追う最終回、四番打者の満塁本塁打が起死回生の一撃となりました。
- 客足が落ち込んだ商店街は、大規模な再開発によって起死回生を図っています。
「起死回生」の類似表現
捲土重来(けんどちょうらい)
一度敗れたり失敗したりした人が、再び勢力を盛り返してやり直すことを意味します。
「捲土重来を期す」のように使います。
「起死回生」は危機的な状況そのものを立て直す場合に使えるのに対し、「捲土重来」は一度敗れた人や勢力が再挑戦する場面に向いています。
一発逆転(いっぱつぎゃくてん)
一度の好機を生かして、それまで不利だった形勢を逆転させることです。
「一発逆転」は一回の行動や好機で形勢が変わることを強く表します。
「起死回生」は、一度の決定的な行動に限らず、倒産寸前の会社を立て直すような場合にも使えます。
「起死回生」の古い用例
中江藤樹の『翁問答』下(1650)には、
「百病を療治し起死回生の功をたてたる扁鵲」
とあります。
扁鵲の医術について述べた箇所で、「起死回生の功」という形が使われています。
ここでの「起死回生」は、現代によく見られる事業や勝負の立て直しではなく、病人を死の淵から救う医術の働きを指しています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「起死回生」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
- 司馬遷『史記』巻百五「扁鵲倉公列伝」。
- 李昉等編『太平廣記』第2冊、中華書局、1961年、巻五十九「太玄女」。
- 中華民国教育部『成語典』「起死回生」項。
