美人薄命
読み方:びじんはくめい
「美人薄命」の意味
「美人薄命」とは、容姿の美しい女性は、とかく不幸な運命にあったり、病弱で早く亡くなったりすることが多いという言い方です。
「薄命」には、寿命が短いことだけでなく、運に恵まれず不幸であることも含まれます。
「美人薄命」の語源・由来
もとになった表現は、北宋の詩人・蘇軾の詩『薄命佳人』に見られます。
末尾には、
自古佳人多命薄、閉門春盡楊花落
とあります。
「昔から佳人は命が薄いことが多い」という内容ですが、原文に「美人薄命」という四字熟語がそのまま置かれているわけではありません。
「佳人」と「命薄」の間には「多」があり、詩の題名も「薄命佳人」です。
後代には「佳人薄命」の四字形が成立し、明代の謝讜『四喜記』第十七齣にも「佳人薄命」とあります。
日本語の「美人薄命」は、この「佳人薄命」と同じ意味を持つ語形として用いられています。
「美人薄命」という四字形そのものがいつ成立したのかは明確ではありません。
「美人薄命」の使い方
次のような形で使われます。
- 「美人薄命という〜」
後ろに「言葉」「ことわざ」などを続けます。 - 「美人薄命だ/だった」
美貌で知られた人物の生涯について述べるときに使います。 - 「美人薄命を思わせる/連想させる」
人物の生涯や物語の展開などについて述べる形です。
「美人薄命」の例文
- その女優は若くして世を去り、後年も美人薄命という言葉とともに語られることがある。
- 祖母は九十歳を過ぎても元気で、「私には美人薄命は当てはまらなかったね」と笑っている。
- この小説は、美貌の主人公が次々と不運に見舞われる展開が美人薄命を思わせる。
「美人薄命」の類似表現
才子多病(さいしたびょう)
才能のある人は病気がちであるという表現です。
「美人薄命」が容姿と不運・短命を結び付けるのに対し、「才子多病」は才能のある人と病弱さを結び付けています。
「美人薄命」を構成する言葉の意味
薄命
「薄命」は、日本の漢詩文では早くから「運に恵まれないこと」の意味で使われ、814年成立の『凌雲集』に用例があります。
「寿命が短いこと」という語義も、14世紀末から15世紀前半ごろの『心田詩藁』に見られます。
「美人薄命」の古い用例
日本語では、末広鉄腸の政治小説『雪中梅』上編が刊行された1886年(明治19年)の序に、
「美人薄命にして才子多病なり」
とあります。
少なくとも明治中期には、「美人薄命」という現在と同じ四字の並びが文章中で使われていました。
長与善郎の『竹沢先生と云ふ人』(1924~1925年)では、桜の美しさとはかなさを「美人薄命」に重ねる使い方が見られます。
この時期には、人の生涯だけでなく、短く散る美しさをたとえる表現としても応用されていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「美人薄命」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「美人薄命」「薄命」項。
- 蘇軾『東坡全集』巻四「薄命佳人」。
- 中華民国教育部『重編國語辭典修訂本』「佳人薄命」項。
