老少不定
読み方:ろうしょうふじょう
「老少不定」の意味
「老少不定」とは、人の寿命は年齢の順に定まっているわけではなく、老人より若者が先に亡くなることもあり、死がいつ訪れるかは分からないということです。
仏教的な無常観を背景に持つ言葉です。
「老少不定」の語源・由来
「老少不定」は、古い仏教文献に現在と同じ四字の形が見られる語です。
『観心略要集』には、
世人之愚也、於老少不定之境、成千秋萬歳之執。
とあります。
寿命の定まらない境遇にありながら、いつまでも生き続けるかのような執着を持つ人間のあり方を戒める文脈で「老少不定」が使われています。
『観心略要集』は古くから源信の著作と伝えられてきましたが、その著者と成立時期については研究上の問題があります。
『新纂浄土宗大辞典』は後世に源信へ仮託された著作とみて、源信以後の11世紀までに成立した可能性を示しています。
西村冏紹はさらに、承暦元年(1077)の成立とする説を提示しています。
したがって、「老少不定」を源信自身の造語と断定することはできません。
「老少不定」の使い方
次のような形で使われます。
- 「老少不定と〜」
後ろに「いう」「聞く」などを続けます。「老少不定といいます」などの形です。 - 「老少不定の〜」
後ろに「世」「世の中」「境」などを続けます。「老少不定の世」といった形で使います。 - 「老少不定で〜」
後ろに人の命についての判断や考えを続けます。「老少不定で先は分からない」などと使います。
「老少不定」の例文
- 住職は法話の中で、「人の命は老少不定です」と静かに語りました。
- 若い友人の急死に接し、彼は老少不定という言葉を初めて自分のこととして考えました。
- 老少不定といいますから、若いからといって将来の時間が保証されているわけではありません。
「老少不定」の類似表現
無常迅速(むじょうじんそく)
万物や人の世が非常に速く移り変わること、また、人の死が思いがけず早く訪れることをいいます。
年齢の順序よりも、変化や死の訪れの速さに重きがある表現です。
生死無常(しょうじむじょう)
人の生死には常がなく、人生がはかないことを広くいう仏教語です。
老若という年齢の対比を特に示さない点で使える範囲が広くなっています。
「老少不定」の古い用例
13世紀前半の高野本『平家物語』巻一には、
年のわかきをたのむべきにあらず、老少不定のさかひなり
とあります。
「老少不定のさかひ」という形で「の」を介して後ろの名詞へ続けており、中世の日本語の文章ですでに現在と同じ四字形が用いられていました。
1655年ごろの評判記『秘伝書』には
「老少不定ほど、物うき事はあらじ」
という例があります。
ここでは「老少不定ほど」と「ほど」を直接続ける形が使われています。
「老少不定」の間違いやすい使い方・表記
「不定」は一般の語では「ふてい」と読むことがありますが、「老少不定」では「ふじょう」と読みます。
「ろうしょうふてい」ではありません。
仏教語として伝わった読み方です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「老少不定」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「老少不定」項。
- 浄土宗大辞典編纂実行委員会編・浄土宗大辞典編纂委員会監修『新纂浄土宗大辞典』浄土宗、2016年、「観心略要集」項。
- 西村冏紹「『観心略要集』成立考(末)」『印度學佛敎學研究』第37巻第2号、1989年、672~678頁。
- 丁福保『佛學大辭典』「老少不定」項。
