狼子野心
読み方:ろうしやしん
「狼子野心」の意味
「狼子野心」とは、人になれ従わず、すきがあれば相手に害を加えようとする心や、そのような性質を持つ人のたとえです。
また、身分に釣り合わない大きな望みを指すこともあります。
「狼子野心」の語源・由来
「狼子野心」は、中国の歴史書『春秋左氏伝』宣公四年に由来します。
楚の子文は、子良の子として生まれた越椒を見て、その容姿や声から将来一族に災いをもたらすことを恐れました。
その際、古くからの言い伝えとして、
「諺曰、狼子野心。」
と述べています。
本文では「諺曰」と前置きされており、「狼子野心」がすでにことわざとして引用されています。
後に越椒は若敖氏の一族を率いて楚王と争いました。
現在と同じ「狼子野心」の四字が原典にそのまま存在するため、故事の内容から後世に作られた四字熟語ではありません。
「狼子野心」の使い方
次のような形で使われます。
- 「狼子野心の〜」
後ろに人物を表す言葉などを続けます。「狼子野心の人物」「狼子野心の持ち主」などの形です。 - 「狼子野心を抱く」
人を害したり、自分の立場を越えた企てを進めたりする心を内に持つ場合に使います。「権力者に対して狼子野心を抱く」などと続けます。 - 「狼子野心をあらわにする」
隠していた害意や企てが表面に出た場面で使います。「ついに狼子野心をあらわにする」などの形です。
「狼子野心」の例文
- 長く忠実な部下を装っていた男だったが、主君が弱った途端に狼子野心をあらわにした。
- 周囲は彼が密かに狼子野心を抱いているのではないかと警戒していた。
- 物語では、恩を受けながら裏切りを企てる狼子野心の人物として描かれている。
「狼子野心」の類似表現
人面獣心(じんめんじゅうしん)
人の姿をしながら、けもののように冷酷で人情を知らない人物を強く非難する言葉です。
「狼子野心」が人になれ従わない性質や害意を問題にするのに対し、「人面獣心」は人間らしい情や道徳を欠いていることを強く責める場合に向いています。
極悪非道(ごくあくひどう)
この上なく悪く、道理や人情から外れていることを表します。
人物だけでなく、その行為や振る舞いにも使いやすい点が異なります。
「狼子野心」を構成する言葉の意味
狼子
「狼の子」を意味します。
「子」はここでは子供という意味です。
野心
この四字熟語での「野心」は、現在よく使われる「大きな望み」だけを指す語ではなく、「野生のままで人になれ従わない荒々しい心」という古い意味を持っています。
「狼子」と組み合わさることで、飼われても本性を失わない狼の子を表しています。
「狼子野心」の間違いやすい使い方・表記
「野心」という語は現在、「大きな目標を実現しようとする意欲」のように肯定的な意味合いで使われることもありますが、「狼子野心」は人をほめる四字熟語ではありません。
単に「向上心が強い」「大きな夢を持っている」という人物に対して使うのは避けます。
「狼子野心」には、害意や凶暴な本性を含む強い否定的な意味があります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「狼子野心」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「狼子野心」項。
- 『春秋左氏伝』宣公四年。
- 台湾教育部『成語典』2020年、「狼子野心」項。
