読み方:めんきょかいでん

「免許皆伝」の意味

武術や芸道などで、師匠が弟子にその道の奥義を残らず伝え、修行の修了を認めることです。

「免許皆伝」の語源・由来

「免許皆伝」の背景には、日本の芸道や武術で発達した伝授の仕組みがあります。

ここでの「免許」は、師から弟子へその道の奥義を伝授すること、またはその証書を指します。

「皆伝」は、流派の奥義をすべて伝えることを意味します。

中世に成立した書・和歌・連歌・能楽・花・茶などでは、それぞれ伝授の方式が整えられました。

近世初頭の流派武術でも、修行の段階に応じて「切紙」「目録」「免許」「皆伝」などを設け、証状を授ける仕組みが用いられました。

流派によって段階や名称は異なります。

中国古典の特定の故事から生まれた四字熟語ではなく、こうした日本の伝授制度と結びついた表現です。

現在と同じ「免許皆伝」という四字の形がいつ成立したのかは、はっきりしていません。

「免許皆伝」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「免許皆伝を受ける」
    弟子の側から、師に修了を認められたことを表すときに使います。「剣術の免許皆伝を受ける」などの形です。
  • 「免許皆伝となる」
    修行を重ねて、その段階に達したことを表します。「若くして免許皆伝となる」などと使います。
  • 「免許皆伝の〜」
    後ろに「腕前」などを続けます。「免許皆伝の腕前」のような形です。

「免許皆伝」の例文

  • 彼は十代から剣術を学び続け、三十歳で免許皆伝を受けました。
  • 若くして免許皆伝となった彼女は、その後も師のもとで稽古を続けました。
  • 長年磨いてきた包丁さばきは、師匠も認める免許皆伝の腕前です。

「免許皆伝」の類似表現

一子相伝(いっしそうでん)

学問や技芸などの奥義を、自分の子のうち一人だけに伝えることです。

「誰に伝えるか」が限られていることを表す点が、「免許皆伝」と異なります。

師資相承(ししそうしょう)

師から弟子へ法や道を受け継いでいくことです。

「免許皆伝」が一人の弟子の修行の到達を表すのに対し、「師資相承」は教えが師弟の間で受け継がれていくことに使われます。

「免許皆伝」の古い用例

確認できる早い用例として、和田垣謙三の『兎糞録』(1913年)があります。

弓術について、

「予の師事せる先生は特に予に免許皆伝を授け」

とあり、秘伝の書と免許状を与えられたことが続けて記されています。

「免許皆伝を授ける」という形で、実際の弓術の伝授について使われています。

菊池寛の『恩讐の彼方に』(1919年)には、

「十九の年に、免許皆伝を許されると」

とあります。

柳生の道場で修行した人物について「免許皆伝を許される」という形が用いられており、大正期には文学作品でも使われていたことが分かります。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「免許皆伝」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「免許皆伝」「皆伝」「免許」項。
  • 小学館『日本大百科全書』「皆伝」項、渡邉一郎。
  • 和田垣謙三『兎糞録』至誠堂書店、1913年。
  • 菊池寛「恩讐の彼方に」『中央公論』1919年。
ABOUT ME
北澤篤史
四字熟語・漢字熟語・ことわざ・慣用句・故事成語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。ことわざ学会理事。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。