和魂漢才
読み方:わこんかんさい
「和魂漢才」の意味
「和魂漢才」とは、日本固有の精神や考え方を大切にしながら、中国から伝わった学問や知識を学び、取り入れることです。
外来の知識を退けるのではなく、自国の立場を保ちながら活用しようとする考えを表します。
「和魂漢才」の語源・由来
「和魂漢才」という四字の形は、菅原道真の教えを記したとされる『菅家遺誡(かんけいかい)』に見られます。
ただし、『菅家遺誡』は道真自身が書いたものではなく、後世に道真へ仮託して作られた書と考えられています。
成立時期についても鎌倉時代末期ごろとする資料と室町時代とする資料があり、道真の造語と断定することはできません。
さらに、『菅家遺誡』のうち「和魂漢才」を含む二章は、もとの本文に後から加えられたとする研究があります。
このため、現在と同じ四字の語形がいつ成立したかについては慎重に考える必要があります。
四字熟語が成立する以前から、「大和魂」と中国の学問を意味する「才」を対になるものとして考える発想はありました。
平安時代の『源氏物語』「少女」巻には
「才を本としてこそ、大和魂の世に用ひらるる方も、強う侍らめ」
とあります。
ここでの「大和魂」は、後世の国家主義的な「日本精神」とは異なり、実生活で物事を判断する知恵や才覚に近い意味でした。
その後、「和魂」の意味が日本人固有の精神という方向へ変化したことで、「日本の精神を保ちながら中国の学問を取り入れる」という現在よく知られる意味が定着しました。
「和魂漢才」の使い方
次のような形で使われます。
- 「和魂漢才の〜」
後ろに「精神」「理念」「思想」などを続けます。「和魂漢才の思想」「和魂漢才の理念」などの形です。 - 「和魂漢才を重んじる」
学問や教育、文化を受け入れる姿勢について述べるときに使います。「教育で和魂漢才を重んじる」などと続けます。 - 「和魂漢才を掲げる」
学校や組織などが方針や理念として示す場合に使います。「学問の理念として和魂漢才を掲げる」などの形です。
「和魂漢才」の例文
- 明治以前の日本文化を調べる中で、中国の学問を取り入れる姿勢として和魂漢才という考えに注目した。
- 彼は外国の知識をそのまま受け入れるのではなく、和魂漢才を重んじて自国の事情に合わせようとした。
- この学校では、伝統を尊重しながら広く学問を修める理念を和魂漢才になぞらえて説明している。
「和魂漢才」の類似表現
和魂洋才(わこんようさい)
「漢才」に代えて西洋の学問・技術を取り入れることをいう表現です。
西洋文化の受容が大きな課題となった近代日本を説明するときによく用いられます。
士魂商才(しこんしょうさい)
武士の精神と商業上の才能をあわせ持つことをいう言葉です。
渋沢栄一は「和魂漢才」を踏まえて「士魂商才」を唱え、実業に道徳的な精神と経営の才覚の両方が必要だと説きました。
「和魂漢才」の古い用例
徳富蘆花の小説『黒潮』(1902~05年)には、
「和魂漢才という事もあって、日本には日本の長所がある」
という用例があります。
明治後期には「和魂漢才」が特定の古典の文句としてだけでなく、日本と外国文化との関係を論じる際に持ち出せる言葉として使われていたことが分かります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「和魂漢才」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「和魂漢才」項。
- 若井勲夫「座田維貞―和気清麻呂の顕彰者―」『京都産業大学論集 人文科学系列』第47号、京都産業大学、2014年、464~416頁。
