読み方:あんうんていめい

「暗雲低迷」の意味

「暗雲低迷」は、暗い雲が低く漂うこと、また、危険・不穏なことが起こりそうな形勢や、心が晴れない状態が続いていることを表します。

実際の空模様だけでなく、社会情勢や人の心を表す比喩としても用いられます。

「暗雲低迷」の使い方

次のような形で使われます。

  • 「暗雲低迷の〜」
    後ろに「状態」「時期」「情勢」などを続けます。「暗雲低迷の状態」「暗雲低迷の時期」などの形です。
  • 「暗雲低迷している」
    「情勢」「経済」「業績」などを主語にして使えます。「経済が暗雲低迷している」などと続けます。「暗雲低迷」には「する」を付ける用法があります。
  • 「暗雲低迷とでもいうところだ」
    目の前の状況を文章語的に言い表す形です。「暗雲低迷とでもいうところか」という用例もあります。

「暗雲低迷」の例文

  • 停戦協議が何度も中断し、地域情勢は暗雲低迷の状態が続いている。
  • 主力商品の売り上げが回復せず、会社の業績は暗雲低迷している。
  • 故障者が相次いだうえに連敗も重なり、今季のチームは暗雲低迷といったところだ。

「暗雲低迷」の類似表現

前途多難(ぜんとたなん)

「前途多難」は、目的を達成するまでに多くの障害があることや、将来に多くの困難が予想されることをいいます。

「暗雲低迷」は現在進行中の情勢や心境にも用いられるため、同じ先行きの悪さを表す場合でも使える範囲が異なります。

「暗雲低迷」を構成する言葉の意味

低迷(ていめい)

「低迷」は、現代では「よくない状態から抜け出せない」という意味でよく使われますが、それ以前から「低く垂れ下がって漂う」という意味を持つ語です。

平安時代の漢詩文集『菅家文草』にも、この古い語義による用例が見られます。

「暗雲低迷」の「低迷」には、この「低く漂う」という意味が直接関わっています。

「暗雲低迷」の古い用例

大正7年(1918年)12月13日付『艸楽新聞』657号には、

「暗雲低迷の道修町――冬枯れに痛む大小成金」

という記事題がありました。

第一次世界大戦後の不況に苦しむ大阪・道修町の医薬品業界についての表現で、大正期にはすでに「暗雲低迷の〜」という形が新聞・業界誌で使われていたことが分かります。

大正10年(1921年)3月7日付『中外商業新報』には、

「暗雲低迷中の綿糸と棉花の基数」

という記事があります。

「暗雲低迷中の〜」という形で綿糸・綿花市場を扱っており、経済や市況を表す言葉として使われていました。

昭和4年(1929年)の細木原青起『晴れ後曇り』には、

「胸には暗雲低迷して」

という用例があります。

ここでは「暗雲低迷」に「して」を続け、人の胸中を表しており、当時すでに心情についても用いられていました。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「暗雲低迷」「前途多難」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「暗雲」「低迷」項。
  • 公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』「暗雲低迷」項。
  • 網島聖「戦間期の同業者町における取引関係と『調整』の変化――1914~1940年の大阪・道修町の医薬品産業を事例に――」『地理学評論』87巻1号、2014年、38~59頁。
  • 神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫「暗雲低迷中の綿糸と棉花の基数――最近の大暴落と開戦以来の大波瀾」『中外商業新報』1921年3月7日。
ABOUT ME
北澤篤史
四字熟語・漢字熟語・ことわざ・慣用句・故事成語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。ことわざ学会理事。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。