有象無象
読み方:うぞうむぞう
「有象無象」の意味
「有象無象」とは、種々雑多な取るに足りない人や物を、ひとまとめにして低くいう言葉です。
特に人の集まりについて使うと、相手を見下す強い響きを伴います。
「有象無象」の語源・由来
「有象無象」は、仏教語の「有相無相(うそうむそう)」から転じた言葉とされています。
「相」は仏教で事物の特徴・あり方などを指し、「有相」と「無相」は対になる概念として用いられます。
漢訳仏典『十二門論』には、第五門の題として
「觀有相無相門第五」
とあり、「有相無相」という四字の並びが実際に見られます。
したがって、古典にある語形は現在の「有象無象」ではなく「有相無相」です。
日本語では「有相無相」から「有象無象」へ転じ、もとの広い意味から「種々雑多なもの」という意味が生まれ、さらに人や物を卑しめる現在の用法へ発展しました。
ただし、「相」が「象」に替わった具体的な過程や、現在の漢字表記がいつ定着したのかは明確ではありません。
「有象無象」の使い方
次のような形で使われます。
- 「有象無象の〜」
後ろに「連中」「人々」「集まり」などを続けます。「有象無象の連中」のように、人を低く評価する言い方としてよく見られます。 - 「有象無象が集まる」
さまざまな人が寄り集まっていることを、批判や軽蔑を込めて述べるときに使います。 - 「有象無象に紛れる」
大勢の雑多な人々の中に入り込み、目立たなくなる場面などで使えます。
「有象無象」の例文
- 大きな利益が出るという噂を聞きつけ、会場には有象無象の投資家が押しかけてきました。
- 彼は周囲を有象無象と決めつけ、自分だけが特別だという態度を崩しませんでした。
- 数え切れないほどの応募者の中で、有象無象に紛れない企画を提出する必要があります。
「有象無象」の類似表現
烏合の衆(うごうのしゅう)
「烏合の衆」は、規律や統一がなく、ただ寄り集まっている人々を指します。
「有象無象」が人や物の価値を低く見る言葉なのに対し、「烏合の衆」は集団にまとまりがないことを問題にする場合に適しています。
玉石混交(ぎょくせきこんこう)
「玉石混交」は、価値のあるものと価値のないものが入り交じっていることです。
集まっているものをすべて低く扱うのではなく、優れたものも含まれている点が「有象無象」と異なります。
「有象無象」の古い用例
室町時代末から近世初期の作品とされる幸若舞『笛之巻』の寛永版には、
「末世の衆生のまよひにはうざうむざう是おほし」
とあります。
引用部分では漢字ではなく「うざうむざう」と仮名で記されており、この段階では仏教的な意味で使われています。
宝暦13年(1763)の『川柳評万句合』には、
「やせ世帯うぞうむぞうにうんざりし」
という例があります。
この用例は、現在につながる「種々雑多なくだらない人や物」という意味の古い例として伝わっています。
「有象無象」の間違いやすい使い方・表記
読み方は「うぞうむぞう」です。
「ゆうぞうむぞう」「ゆうしょうむしょう」などとは読みません。
現在の一般的な表記では「象」を用い、「有象無象」と書きます。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「有象無象」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「有象無象」「有相無相」項。
- 鳩摩羅什訳『十二門論』「観有相無相門第五」。
- 日蓮宗「有相無相」。
