紆余曲折
読み方:うよきょくせつ
「紆余曲折」の意味
「紆余曲折」とは、道などが曲がりくねっていること、また、物事が順調には進まず、込み入った経過をたどることです。
現代では、計画・交渉・人生などが途中でさまざまな変化を経験したことを表す意味で広く使われます。
「紆余曲折」の語源・由来
「紆余曲折」は、特定の故事から生まれた語ではなく、「紆余」と「曲折」という、どちらも曲がりくねることに関係する語を重ねた表現です。
「紆余」の「紆」「余」は、川や丘などが屈曲する様子を表します。
「紆餘」という語は古く、前漢の司馬相如「上林賦」に「紆餘委蛇」の形で使われています。
さらに、元代の学者・呉澄の『呉文正集』「孫履常文集序」には、
明潔整嚴,紆餘曲折
と、現在の「紆余曲折」に当たる四字が続けて現れます。
この序文には「至順壬申」とあり、1332年の文章です。
ここでは文章の運びを評する語として用いられており、少なくとも元代の中国には「紆餘曲折」という四字の並びが存在していました。
ただし、現代日本語と同じ意味・用法をもつ固定した四字熟語がいつ成立したかは、この用例だけからは特定できません。
「紆余曲折」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「紆余曲折を経て〜」
複雑な経過のあとに、ある結果へ至ったことを述べます。「紆余曲折を経て合意する」「紆余曲折を経て完成する」などと使います。 - 「紆余曲折の末〜」
長い経過の最後に生じた結果を続けます。「紆余曲折の末に結論を出す」「紆余曲折の末の決定」などの形です。 - 「紆余曲折がある/あった」
過程にさまざまな変化や込み入った事情があったことを述べます。「成立までに紆余曲折があった」「交渉には紆余曲折がある」などと使います。 - 「紆余曲折する」
道や川などが曲がりくねる様子にも使えます。「山道が紆余曲折する」「川が紆余曲折して流れる」などの形です。
「紆余曲折」の例文
- 両社の交渉は何度も条件が変更されたが、紆余曲折を経てようやく契約がまとまった。
- 当初は海外進学を考えていた彼女も、紆余曲折の末、故郷で店を開く道を選んだ。
- この制度が現在の形になるまでには、多くの紆余曲折があった。
「紆余曲折」の類似表現
試行錯誤(しこうさくご)
「試行錯誤」は、さまざまな方法を実際に試し、失敗を重ねながら解決方法を探すことに使います。
自分から何度も試す行為をいう場合には「試行錯誤」が適していますが、周囲の事情や方針変更などによって経過が複雑になった場合には「紆余曲折」が使えます。
波瀾万丈(はらんばんじょう)
「波瀾万丈」は、人生や出来事に大きな変化が次々と起こる様子に使われ、劇的な響きを伴います。
「紆余曲折」は、交渉や計画のような比較的限られた過程にも使えます。
「紆余曲折」の古い用例
日本語では、久米邦武編『特命全権大使米欧回覧実記』に、
「紆余曲折して数島を作る」
という用例があります。
同書は1878年(明治11年)刊で、ここではセーヌ川について述べており、川が実際に曲がりくねるという意味で使われています。
三宅雪嶺の『想痕』(1915年の用例)には、
「或は紆余曲折して解説する」
とあります。
この例では地形ではなく、説明がまっすぐ進まず曲折することについて使われており、物事の進み方を表す用法がすでに見られます。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 飯間浩明編『小学館 四字熟語を知る辞典』小学館、2018年、「紆余曲折」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「紆余曲折」「紆余」「曲折」項。
- 呉澄『呉文正集』巻二十二「孫履常文集序」。
- 中華民国教育部『重編國語辭典修訂本』「紆餘」項。
