欲の皮が突っ張る
読み方:よくのかわがつっぱる
「欲の皮が突っ張る」の意味
非常に欲が深く、金銭や物、利益などを必要以上に得ようとすることです。
単に何かを欲しがるというより、度を越して欲張っている様子を指します。
人の強い欲を批判したり、あきれたりする気持ちを込めて使うことの多い表現です。
「欲の皮が突っ張る」の語源・由来
「欲の皮」は、欲の強いことを「皮」にたとえた言葉で、「欲の皮が張る」「欲の皮が突っ張る」などの言い方で用いられてきました。
「突っ張る」は、皮がぴんと張った状態を表します。
「欲の皮が突っ張る」は、欲を皮になぞらえ、その皮が張りつめるほど欲が強いというたとえから生まれた表現で、「欲の皮が張る」も同じ発想による言い方です。
「欲の皮が突っ張る」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「欲の皮が突っ張っている」
欲深い状態が続いている人について述べる形です。「彼は欲の皮が突っ張っている」「あの店主は欲の皮が突っ張っている」などと使います。 - 「欲の皮が突っ張って〜」
欲深さが行動に表れていることを述べるときに使います。「欲の皮が突っ張って値をつり上げる」「欲の皮が突っ張って取り分を増やす」などの形です。 - 「欲の皮が突っ張ると〜」
欲張りすぎた場合に起こる結果や問題を続けます。「欲の皮が突っ張ると判断を誤る」「欲の皮が突っ張ると損をする」などと使います。 - 「欲の皮が突っ張った〜」
人物などを後ろから修飾する形です。「欲の皮が突っ張った人」「欲の皮が突っ張った商人」などと続けます。
「欲の皮が突っ張る」の例文
- 高い利益ばかり求めて危険な投資に手を出していては、欲の皮が突っ張ると冷静な判断までできなくなる。
- 遺産を少しでも多く受け取ろうとする叔父は、親族から欲の皮が突っ張っているとあきれられていた。
- 相手の苦しい事情につけ込んでさらに値下げを迫るとは、ずいぶん欲の皮が突っ張ったやり方だ。
「欲の皮が突っ張る」の類似表現
欲の皮が張る(よくのかわがはる)
意味はほぼ同じで、多くの場面で言い換えられます。
国語辞典でも、両者は対応する表現として扱われています。
欲張る(よくばる)
「欲張る」は、何でも欲しがったり、多くを求めたりすることを広く表す日常的な言葉です。
「仕事も遊びも欲張る」のように、必ずしも強い非難を伴わない使い方もできます。
「欲の皮が突っ張る」は、度を越した欲深さを批判的にいう場合に向いており、「欲張る」よりも否定的な響きが強くなります。
「欲の皮が突っ張る」の古い用例
「欲の皮」というたとえそのものは、江戸時代から見られます。
1715年の談義本『艷道通鑑』には、「欲の皮が千枚道具になればとて」という記述があります。
この段階ですでに、強い欲を「皮」にたとえる表現が使われていますが、ここではまだ「突っ張る」という言い方ではありません。
佐々木味津三の『右門捕物帖』「闇男」には、「このふたり、欲の皮が突っ張ってるんだ」とあります。
「闇男」は1931年9月出版の博文館『續右門捕物帖』にも収録されており、昭和初期には「欲の皮が突っ張る」が、現在とほぼ同じ意味の話し言葉として使われていたことが分かります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「欲の皮が突っ張る」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「欲の皮」項。
- 『艷道通鑑』1715年。「欲の皮」の用例。
- 佐々木味津三『右門捕物帖 30 闇男』。底本『右門捕物帖(三)』春陽文庫、春陽堂書店、1982年。
- 佐々木味津三『續右門捕物帖』博文館、1931年。
