欲を言えば
読み方:よくをいえば
「欲を言えば」の意味
今の状態でも大きな不足はないものの、さらに望ましいことを挙げるならという意味です。
現状をある程度認めたうえで、追加の希望や注文を控えめに述べるときに使います。
「欲を言えば」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「欲を言えば、〜てほしい」
相手や物事に対する追加の要望を述べる形です。「欲を言えば、もう少し早く知らせてほしい」「欲を言えば、説明を増やしてほしい」などと使います。 - 「欲を言えば、〜が欲しい/〜がいい」
さらに備わっていると望ましいものや条件を挙げます。「欲を言えば、収納が欲しい」「欲を言えば、もう少し広い部屋がいい」などの形です。 - 「〜だが、欲を言えば〜」
前半で一定の満足や評価を示し、そのあとに追加の希望を続けます。「十分な出来だが、欲を言えば色に変化が欲しい」「便利だが、欲を言えば駅にもう少し近いといい」などと使います。
「欲を言えば」の例文
- この部屋は日当たりもよく十分気に入っていますが、欲を言えば、もう少し収納があるとうれしいです。
- 新しい企画書は要点がよく整理されています。欲を言えば、比較表を一枚加えてほしいところです。
- 今季のチームは予想以上に健闘したが、欲を言えば、終盤の接戦でもう一勝してほしかった。
「欲を言えば」の類似表現
贅沢を言えば(ぜいたくをいえば)
追加の希望を控えめに述べる点では「欲を言えば」とよく似ています。
「贅沢」には、ふさわしい程度や限度を超えた要求という意味があるため、「贅沢を言えば」のほうが、自分の希望をやや過分なものとして断る気持ちが表れやすい表現です。
できれば
「できれば」は「可能であるならば」という意味で、希望や依頼をやわらかく示します。
「欲を言えば」と違い、今の状態ですでに不足がないことを前提とする必要はないため、「できれば今日中に返事をください」のような一般的な依頼にも広く使えます。
「欲を言えば」の古い用例
夏目漱石『吾輩は猫である』には、「ただ慾を云うと」という言い回しが使われています。
この作品は、1905(明治38)年から1906(明治39)年にかけて『ホトトギス』に発表されました。
ここでは、猫のために経を読んでもらったことには満足しながら、さらに望む点として経の短さに触れています。
「慾」「云う」という表記や「欲を言うと」という言い方の違いはありますが、追加の希望を述べる働きは現代の「欲を言えば」とほぼ同じです。
『精選版 日本国語大辞典』でも、この用例が最も早く取り上げられた例として掲げられています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「欲を言えば」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「欲を言うと」項。
- 夏目漱石『吾輩は猫である』、底本『夏目漱石全集1』ちくま文庫、筑摩書房、1987年。
