後ろ髪を引かれる
読み方:うしろがみをひかれる
「後ろ髪を引かれる」の意味
未練や心残りがあって、その場を離れたり、きっぱりと思い切ったりできない気持ちをいいます。
人や場所との別れだけでなく、仕事や計画などを手放すことに迷いが残る場合にも使われます。
「後ろ髪を引かれる」の語源・由来
「後ろ髪」は、頭の後ろ側に生えている髪です。
前へ進もうとしているのに、後ろからその髪を引かれて進めない姿を、気持ちがあとに残って先へ進みきれない状態に重ねた表現です。
「後ろ髪を引かれる」に当たる言い回しは室町時代の謡曲にも見られ、古くから未練や別れがたさを表す比喩として使われてきました。
「後ろ髪を引かれる」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜に後ろ髪を引かれる」
「〜」には、離れがたく感じる人・場所・物事などが入ります。「故郷に後ろ髪を引かれる」「家族に後ろ髪を引かれる」などの形です。 - 「後ろ髪を引かれる思いで〜」
迷いや心残りを抱えながら何かをする場合に使います。「後ろ髪を引かれる思いで帰る」「後ろ髪を引かれる思いで退職する」などと続けます。 - 「後ろ髪を引かれながら〜」
心残りはあるものの、実際にはその場を離れたり決断したりする形です。「後ろ髪を引かれながら出発する」「後ろ髪を引かれながら店を出る」などと使います。 - 「後ろ髪を引かれるような思い」
心残りのある気持ちを名詞として表す形です。「後ろ髪を引かれるような思いがする」「後ろ髪を引かれるような思いで別れる」などと使います。
「後ろ髪を引かれる」の例文
- 長年暮らした町を離れる日、思い出の詰まった家を振り返りながら、後ろ髪を引かれる思いで駅へ向かった。
- 子どもが不安そうな顔をしていたので、仕事に行かなければならないと分かっていても、後ろ髪を引かれた。
- やり残したことはいくつもあったが、後ろ髪を引かれながらも彼は会社を辞め、新しい道へ進んだ。
「後ろ髪を引かれる」の類似表現
名残惜しい(なごりおしい)
人や場所との別れを惜しむ気持ちを表すときによく使います。
「別れが名残惜しい」「名残惜しいが帰る」のように形容詞として使える点も異なります。
未練が残る(みれんがのこる)
終わった恋愛や過去の選択などについて、あとになっても気持ちを断ち切れない場合にも広く使えます。
「後ろ髪を引かれる」は、とくに何かから離れたり次へ進んだりしようとする場面と結びつきやすい表現です。
「後ろ髪を引かれる」の古い用例
室町時代の謡曲『通盛』には、「行くも行かれぬ一の谷の、所から須磨の山の、うしろ髪ぞ引かれし」とあります。
『精選版 日本国語大辞典』では1430年頃の記述として挙げられており、「うしろ髪ぞ引かれし」という古い言い回しで、すでに心をあとに残して立ち去りがたい気持ちを表しています。
為永春水の人情本『春色梅児誉美』は天保3~4年(1832~1833)出版で、「後髪を引かれるような心持」という言い回しがあります。
「〜を引かれるような心持」という言い方は、現代の「後ろ髪を引かれるような思い」に近い言い方です。
「後ろ髪を引かれる」の間違いやすい使い方・表記
「後ろ髪」は「後髪」とも表記され、古い文献や辞書では「後髪を引かれる」の言い方も見られます。
現代では「後ろ髪を引かれる」という表記も広く使われています。
「引かれる」は「引く」の受け身の形なので、「後ろ髪を惹かれる」とは書きません。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「後ろ髪を引かれる」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「後髪を引かれる」項。
