読み方:へいきのへいざ

「平気の平左」の意味

何が起きても、まったく動じず、ものともしないことです。

落ち着きや度胸を評価して使う場合もあれば、非難されても失敗しても気にしない鈍感さ、ずうずうしさを皮肉って使う場合もあります。

「平気の平左」の語源・由来

「平気の平左衛門」を縮めた形です。

「平気」と「平左衛門」の「へい」を重ねた語呂合わせで、まるで人名のようですが、特定の人物を指しているものではありません。

同類の表現として「平気の孫左衛門」もあります。

「平気の平左」の使い方

冗談めいた調子があるため、改まった文書より、会話や軽い調子の文章に向いています。

次のような型がよく使われます。

  • 「〜は/が平気の平左だ」
    動じていない人を「は」や「が」の前に置く基本的な形です。「本人は平気の平左だ」「彼だけが平気の平左だった」などと使います。
  • 「〜ても平気の平左だ」
    「〜ても」の前には、普通なら困ったり驚いたりする出来事を置きます。「非難されても平気の平左だ」「雨に降られても平気の平左だ」などの形です。
  • 「平気の平左で〜」
    助詞「で」に続けて、動じずに行う動作を示します。「平気の平左で聞き流す」「平気の平左でやってのける」などと使います。
  • 「平気の平左でいる」
    動じない状態が続いていることを表します。「騒ぎの中でも平気の平左でいる」「何を言われても平気の平左でいた」などの形です。

「平気の平左」の例文

  • 雨脚が強まっても、登山経験のある姉は「これくらいなら平気の平左だ」と先頭を歩き続けました。
  • 不正を指摘されたのに、責任者は平気の平左で記者の質問を受け流しました。
  • 近くで雷が鳴り、大人たちが驚く中、弟だけは平気の平左でした。

「平気の平左」の類似表現

泰然自若(たいぜんじじゃく)

重大な場面でも落ち着いている態度を、改まった調子でいう言葉です。

沈着さや度量を肯定的に述べる場面に向き、冗談や皮肉を込められる「平気の平左」とは使いどころが違います。

どこ吹く風(どこふくかぜ)

人の忠告や批判を無視し、素知らぬ顔をしている様子に、非難の含みを持たせて使います。

「平気の平左」は、人の言葉に対してだけでなく、危険、痛み、悪天候すらものともしない場合に使える言葉です。

「平気の平左」の古い用例

十返舎一九『続膝栗毛』(1810~1822年刊)第九編には、「そこへいっちゃアへいきの平左衛門といふは、わっちのことさ」とあります。

江戸後期には、省略前の「平気の平左衛門」が使われていました。

徳富蘆花『思出の記』(1900~1901年)には、「伯父は平気の平左で聞いて居る」とあります。

明治期には「平気の平左」という短い言い方が定着し、「で」を介して動作につなげる言い方が使われています。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「平気の平左」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「平気の平左衛門」項・「平気」項。
  • 集英社『ルーツでなるほど慣用句辞典』「平気の平左」項。
ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。