呆れて物が言えない|意味・使い方・例文
読み方: あきれてものがいえない
意味: あまりにも非常識な言動やひどい状況に驚き、あきれ果てて返す言葉を失うこと。
「呆れて物が言えない」の意味
単に驚いて言葉が出ないのではなく、「あまりにもひどい」「どうしてそんなことができるのか」と感じる、強い非難や失望を含む表現です。
実際に何も話せなくなった状態のほか、相手の言動を厳しく批判する決まり文句としても使われます。「呆れる」には、物事の程度があまりにも甚だしく、あっけにとられたり、愛想を尽かしたりする意味があります。
「呆れて物が言えない」の使い方
人の非常識な行動、無責任な態度、身勝手な言い訳などに対して使います。原因となる人や事柄を「には」で示し、「彼の無責任さには呆れて物が言えない」「そんな言い訳をするとは、呆れて物が言えない」のように表現します。
過去の出来事については「呆れて物が言えなかった」、あきれた気持ちをさらに強調する場合には「呆れ返って物が言えない」という形も使われます。
相手本人に向かって言うと、強い非難や軽蔑を示す言葉になります。目上の人や改まった場面では、失礼に聞こえやすいため注意が必要です。
「呆れて物が言えない」の例文
- 部下の成果をすべて自分の手柄として発表した上司には、呆れて物が言えない。
- 「三度も約束を破っておいて、忘れていたで済ませるなんて、呆れて物が言えないよ」
- 不正が明らかになっても責任を取ろうとしない態度に、住民たちは呆れて物が言えなかった。
「呆れて物が言えない」の類似表現
開いた口が塞がらない(あいたくちがふさがらない)
「開いた口が塞がらない」は、驚きあきれて、何も言えなくなる様子を表します。「呆れて物が言えない」と意味はよく似ていますが、口を開けたまま固まってしまうほどの驚きを、目に見える動作にたとえた表現です。
「呆れて物が言えない」は相手への批判や失望を直接表しやすく、「開いた口が塞がらない」は、あまりの出来事にあっけにとられた反応に重点があります。
二の句が継げない(にのくがつげない)
「二の句が継げない」は、驚いたりあきれたりして、次に言う言葉が出てこないことを表します。相手から思いがけない発言を受け、返事を続けられなくなった場面で使いやすい表現です。
「呆れて物が言えない」には、相手の言動をひどいものと見る否定的な評価が強く表れます。一方、「二の句が継げない」は、驚きによって会話を続けられない状態にも使えます。
「物が言えない」の「物」とは?
ここでの「物」は、品物を指しているのではありません。「物を言う」で「言葉を発する」「話をする」という意味になるため、「物が言えない」は、言葉を口にできないということです。
「物を言う」を「話す」という意味で使った例は古く、『新古今和歌集』の詞書にも見られます。
「呆れて物が言えない」の文学作品での用例
坂口安吾の「行雲流水」には、男性たちの考え方を批判する女性の言葉として、「まったく、呆れて物が言えないよ」という用例があります。現在と同じく、相手の言動に対する強いあきれや非難を示しています。この作品は『オール讀物』1949年9月号に発表されました。
太宰治の「男女同権」でも、あまりにひどい仕打ちを受けた人物の心情が「呆れかえって物が言えない気持」と表現されています。驚きだけでなく、失望や悲しみが重なって言葉を失う場面です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「呆れて物が言えない」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「呆れる」「物を言う」項。
- 坂口安吾「行雲流水」『坂口安吾全集 08』筑摩書房、1998年。
- 太宰治「男女同権」『太宰治全集8』ちくま文庫、筑摩書房、1989年。