上を下への大騒ぎ|意味・使い方・例文
読み方: うえをしたへのおおさわぎ
意味: 大勢の人が慌てて入り乱れ、あたりがひどく混乱している様子。
「上を下への大騒ぎ」の意味
多くの人が一度に動き回り、落ち着いて対応できないほど混乱している状態を表します。単に声が大きくて騒がしいのではなく、人々が慌てふためき、ごった返している様子を大きく描く表現です。
事故や行方不明などの困った出来事だけでなく、優勝の知らせや思いがけない成功など、喜ばしい出来事によって騒ぎが起きた場面にも使えます。出来事の良し悪しよりも、その場にいる人たちが入り乱れて混乱していることに重点があります。
「上を下への大騒ぎ」の使い方
「家中が上を下への大騒ぎになる」「町中が上を下への大騒ぎとなる」「会場は上を下への大騒ぎだった」のように、混乱が広がった場所や集団を「が」や「は」で示します。
一人の心の動きを表すというより、家族、職場、会場、町などで、複数の人が同時に慌てている様子を表すときに向いています。
日常会話にも文章にも使えますが、混乱ぶりを強く印象づける表現なので、事務的な報告では「大きな混乱が生じた」などと言い換えると落ち着いた文章になります。
「上を下への大騒ぎ」の例文
- 重要な書類が見当たらず、会議直前の事務所は上を下への大騒ぎになりました。
- 祭りの会場で子どもが迷子になり、家族も係員も上を下への大騒ぎでした。
- 地元チームの優勝が決まった瞬間、商店街は上を下への大騒ぎとなりました。
「上を下への大騒ぎ」の類似表現
てんやわんや
「てんやわんや」は、大勢の人が秩序なく動き回り、ごった返している様子を表します。「上を下への大騒ぎ」よりも話し言葉で使いやすく、「引っ越しの準備でてんやわんやだ」のように、仕事や作業が重なって非常に忙しい状態にも使えます。
一方、「上を下への大騒ぎ」は、周囲を巻き込んだ騒動や大きな混乱を、より強く印象づける表現です。
蜂の巣をつついたよう
「蜂の巣をつついたよう」は、何かをきっかけに急に騒ぎが広がり、収拾がつかなくなった様子を表します。「蜂の巣をつついたような騒ぎ」の形で使うのが一般的です。
「上を下への大騒ぎ」が、人々の入り乱れた混乱ぶりに重点を置くのに対し、「蜂の巣をつついたよう」は、静かだった場所が突然騒がしくなる様子を思い浮かべさせます。
「上を下へ」は何を表している?
「上を下へ」は、もともと「上を下へ返す」という言い方から生まれました。上にあるものを下にし、下にあるものを上にするほど、辺りがひっくり返ったように混乱する様子を表しています。
現在は、「上を下への大騒ぎ」というまとまった形で使われることが多くなっています。「上」と「下」は、地位の高い人と低い人を指しているのではなく、物の上下が入れ替わるほどの激しい混乱をたとえたものです。
「上を下への大騒ぎ」の古い用例
「上を下へ返す」という形は、1220年ごろに成立したとされる金刀比羅本『保元物語』に見られます。御所の兵たちが、辺りをひっくり返すように慌て騒ぐ場面で使われています。
江戸時代初期の浮世草子『世間胸算用』(1692年)には、「上を下へとさはぎ」という用例があります。すでに現在と同じく、人々が入り乱れて騒ぐ様子を表していました。
さらに、江戸時代の咄本『鹿の子餅』(1772年)には、現在とほぼ同じ「上を下への大さわぎ」という形が見られます。
間違いやすい使い方・表記
「上や下への大騒ぎ」と言うことがありますが、本来の形は「上を下への大騒ぎ」です。
「上」と「下」を並べているのではなく、「上にあるものを下へ返す」という成り立ちを持つため、「上を」の後には、方向を示す「下へ」が続きます。「上を下へ返す」と覚えると、「を」と「や」を取り違えにくくなります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「上を下への大騒ぎ」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「上を下へ」「上を下へ返す」項。