いい面の皮
読み方:いいつらのかわ
「いい面の皮」の意味
割に合わないようなひどい目に遭ったり、迷惑を受けたりした相手に対し、とんだ災難だ、ばかばかしいことだという気持ちを込めていう言葉です。
他人の失敗や不運をあざける場合と、自分が受けた損や迷惑について自嘲する場合があります。
「いい面の皮」の語源・由来
「いい」は、ここでは本来の「好ましい」という意味ではなく、反語的・皮肉的に使われています。
「面の皮」は顔の皮のことで、肯定的な「いい」をあえて組み合わせることで、ひどい目に遭った立場を皮肉る表現になっています。
「いい面の皮」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜はいい面の皮だ」
損をした人や迷惑を受けた人を「〜」に置く形です。「巻き込まれた彼はいい面の皮だ」「尻拭いをするこちらはいい面の皮だ」などと使います。 - 「〜こそいい面の皮だ」
「こそ」を使い、ひどい役回りになった人物を強く取り上げる形です。「利用された社員こそいい面の皮だ」「だしにされたこっちこそいい面の皮だ」などといいます。 - 「いい面の皮だ」
誰がひどい目に遭ったのかが前後の文脈から分かる場合は、主語を置かずに使えます。「まったくいい面の皮だ」「これではいい面の皮だ」などの形です。
「いい面の皮」の例文
- 友人の借金を肩代わりしたのに、礼も言わずに姿を消されたのだから、兄もいい面の皮だ。
- 忙しい時間を割いて準備を手伝ったのに、企画そのものが突然中止になり、これでは私たちこそいい面の皮だ。
- 無理な計画だと何度も忠告されたのに聞く耳を持たず、最後に大損したのだから、いい面の皮だと陰で笑われても仕方がない。
「いい面の皮」の類似表現
いい迷惑(いいめいわく)
「いい迷惑」は、自分には関係のないことで迷惑を受けることを皮肉っていう表現です。
「いい面の皮」と使われ方が重なりますが、「いい面の皮」には、ひどい役回りになった人をあざけったり、自分の身の上を自嘲したりする響きがあります。
踏んだり蹴ったり(ふんだりけったり)
悪いことが続けて起こる場合に使います。
「いい面の皮」が損な役回りや迷惑を受けた人についていうのに対し、「踏んだり蹴ったり」は、災難が重なる状況そのものを表すときに適しています。
「いい面の皮」の古い用例
『誹風柳多留』一三八には、天保6年(1835)の用例として、「いい面のかわだと早太思へども」とあります。
「面の皮」が「面のかわ」と表されており、19世紀前半には「いい面の皮」に当たる表現が使われていました。
『精選版 日本国語大辞典』では、この例が初めて登場する例として掲げられています。
明治39年(1906)発表の夏目漱石『坊っちゃん』にも、清の甥について「甥こそいい面の皮だ」とあります。
「〜こそいい面の皮だ」という、現在にも通じる形で使われています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「いい面の皮」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「好面皮」項。
- 夏目漱石『坊っちゃん』、1906年。
