顎が落ちる
読み方:あごがおちる
「顎が落ちる」の意味
食べ物の味が非常によいことをたとえていう慣用句です。
おいしさを強く、やや大げさにほめる響きがあります。
「顎が落ちる」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「顎が落ちるほど〜」
おいしさの程度を強調する形で、後ろに「おいしい」「うまい」などが続きます。「顎が落ちるほどおいしい」「顎が落ちるほどのうまさ」などと使います。 - 「顎が落ちそうだ」
「落ちる」を「落ちそう」として、おいしさを感嘆的に表す形です。「おいしくて顎が落ちそうだ」「一口食べて顎が落ちそうになった」などと使います。 - 「顎が落ちるような〜」
後ろの名詞を修飾する形です。「顎が落ちるようなおいしさ」「顎が落ちるような料理」などと続けます。
「顎が落ちる」の例文
- 旅先で食べた炙り寿司は、脂の甘みが口いっぱいに広がり、顎が落ちるほどおいしかった。
- 炊きたての新米を一口食べると、弟は「顎が落ちそうだ」と驚いた顔をした。
- 評判の洋菓子店には、顎が落ちるような濃厚なチーズケーキを目当てに、朝から客が並んでいた。
「顎が落ちる」の類似表現
頬が落ちる(ほおがおちる)
意味はほぼ同じで、多くの場面で言い換えられます。
「ほっぺたが落ちる」という言い方もあり、こちらは話し言葉で親しみのある表現です。
舌鼓を打つ(したつづみをうつ)
「舌鼓を打つ」は、うまいものを食べたときに舌を鳴らすことをいいます。
「顎が落ちる」が味のよさを強く表すのに対し、「舌鼓を打つ」は「料理に舌鼓を打つ」など、食べて味わう人の様子を述べる形で使えます。
「顎が落ちる」の古い用例
「あご」と同じく下あごを指す「頤(おとがい)」を使った「頤が落ちる」には、古くから味のよさを表す使われ方があります。
『精選版 日本国語大辞典』は、『虎寛本狂言・附子』(室町末~近世初)の「おとがいが落るやうな」を、食べ物の味が非常によい意味の記述として挙げています。
現代の「顎が落ちる」に通じる意味が、「頤」を使った形で見られます
これとは別に、「顎が落ちる」が大笑いの意味で使われた例も残っています。
為永春水の人情本『清談松の調』(1840~1841年)には、「可笑しいので顎が落ちさうだ」という記述があります。
著名な国語辞典編集者の神永曉(かみなが さとる)氏は、柴田虎吉編著の尾張方言集『宮訛言葉の掃溜』(1821年)にも、大笑いする意味の「顎が落ちる」が記録されていると指摘しています。
「顎が落ちる」の間違いやすい使い方
現代語では、「顎が落ちる」を「大笑いする」の意味で使うのは避け、大笑いには「顎が外れる」「顎を外す」を用います。
歴史的には笑いを表した記述が存在しますが、現代の標準的な使い分けとは異なります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「顎が落ちる」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「顎が落ちる」「頤が落ちる」項。
- 神永曉「第246回『あごが落ちる』と『あごが外れる』」『日本語、どうでしょう?』2015年1月26日。
