顎が干上がる
読み方:あごがひあがる
「顎が干上がる」の意味
生計の手段や収入を失い、生活していけなくなることです。
単に手持ちのお金が少ないという程度ではなく、仕事や収入源がなくなり、食べていくことにも困るような状態を指します。
「顎が干上がる」の語源・由来
「干上がる」は、本来、水分がなくなって乾き切ることをいう言葉です。
これと近い慣用句「口が干上がる」は、飲食物を得られず口が干からびることから、生活の手段を失って暮らせなくなる意味になったとされています。
「顎が干上がる」も、食べることに関わる身体部分と「干上がる」を組み合わせた表現で、「口が干上がる」と「顎が干上がる」は同じ意味の慣用句として使われています。
ただし、「口が干上がる」から「顎が干上がる」へ、直接言い回しが変化したと断定できるものはありません。
「顎が干上がる」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜では顎が干上がる」
売上や仕事量、収入などが生活を支えるには足りない状況を「〜では」で示す形です。「この売上では顎が干上がる」「月に数日の仕事では顎が干上がる」などと使います。 - 「〜すると/〜したら顎が干上がる」
生計を失う原因や条件を前に置く形です。「仕事が途絶えると顎が干上がる」「客が来なくなったら顎が干上がる」などと使います。 - 「顎が干上がってしまう」
「〜てしまう」を付け、生計が成り立たなくなる結果を強く意識させる形です。「休業が続けば顎が干上がってしまう」「注文がなければ顎が干上がってしまう」などと使います。
「顎が干上がる」の例文
- 客足がこれ以上減れば、店を構える私たちは顎が干上がってしまう。
- 一社からの仕事だけに頼っていたので、契約を打ち切られたら顎が干上がると彼は危機感を抱いていた。
- 長雨で何日も漁に出られず、漁師たちは「このままでは顎が干上がる」と嘆いた。
「顎が干上がる」の類似表現
口が干上がる(くちがひあがる)
意味はほぼ同じで、生計の手段を失って食べていけなくなることをいいます。
「顎が干上がる」の「顎」を「口」に替えた形で、多くの場面で言い換えられます。
首が回らない(くびがまわらない)
「首が回らない」は、借金や支払いが多く、金銭のやりくりがつかない状態に使います。
「顎が干上がる」が仕事や収入源を失って生活そのものが成り立たないことをいうのに対し、「首が回らない」は特に借金や支払いの負担に重点があります。
「顎が干上がる」の古い用例
1779年の歌舞伎『袖薄播州廻』には、「師匠の頤(おとがい)が干上がるわい」という記述があります。
「頤」の字を使っていますが、言い回しは現在の「顎が干上がる」に当たり、この時代には、すでに生計の道を失って食べていけなくなる意味で使われていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「顎が干上がる」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「顎が干上がる」「口が干上がる」項。
