読み方:くうやくわず

「食うや食わず」の意味

食事も満足にとれないほど、生活がひどく苦しいことを意味します。

食べ物にも困るほどの貧しさを表す言葉で、単に食事の回数が少ないというだけではなく、暮らし向きの厳しさを含みます。

「食うや食わず」の語源・由来

「食う」と、その否定形である「食わず」を「や」で結んだ表現です。

「食べることができるか、できないか」という状態から、満足な食事さえできないほどの暮らしをいうようになりました。

「食うや食わず」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「食うや食わずの〜」
    後ろに「生活」「暮らし」「毎日」などを続ける形です。「食うや食わずの生活」「食うや食わずの暮らし」などと使います。
  • 「食うや食わずで〜」
    苦しい生活状態のまま何かを続けることを述べる形です。「食うや食わずで働く」「食うや食わずで暮らす」などと使います。
  • 「食うや食わずだった」
    以前の暮らしぶりを述べる場合に使えます。「若いころは食うや食わずだった」「当時は食うや食わずだった」などの形です。

「食うや食わず」の例文

  • 画家を志して上京したばかりのころは、食うや食わずの生活を送りながら作品を描いていた。
  • 父は若い時分、日雇いの仕事を転々とし、食うや食わずで家族を支えていたという。
  • 店が軌道に乗った今からは想像もつかないが、創業当初の二人は食うや食わずだった

「食うや食わず」の類似表現

糊口を凌ぐ(ここうをしのぐ)

どうにか生計を立てることをいいます。

「糊口を凌ぐ」はわずかな収入などで暮らしをつないでいくことに使われ、「食うや食わず」ほど食事にも事欠く状態を直接には表しません。

飲まず食わず(のまずくわず)

飲食をまったくしないことを表します。

仕事や移動などに追われ、一時的に何も口にしていない場合にも使われるため、貧しい生活を表す「食うや食わず」とは使い分けが必要です。

「食うや食わず」の古い用例

二葉亭四迷の『浮雲』には、1887年(明治20年)に「食うや食わずにいようといまいと」という言い回しが見られます。

「食うや食わず」がすでに明治20年代初めには使われていた例です。

現代では「食うや食わずの生活」「食うや食わずで暮らす」のような言い回しが目立ちますが、この例では「に」を付けて、その状態にあることを表しています。

黒島傳治の『小豆島』では、「常に食うや食わずの生活をしている」と使われています。

ここでは現代でもよく使われている「食うや食わずの生活」のように、うしろにある言葉をくわしくかざる形で使われています。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「食うや食わず」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
  • 二葉亭四迷『浮雲』。
  • 黒島傳治『小豆島』。
ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。