怒り心頭に発する
読み方:いかりしんとうにはっする
「怒り心頭に発する」の意味
激しく怒ることです。
単に腹を立てる程度ではなく、強い怒りがこみ上げている状態を表します。
「怒り心頭に発する」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「人+が/は+怒り心頭に発する」
怒っている人物を主語にする基本的な形です。文章では過去形の「発した」もよく使われます。「社長が怒り心頭に発した」「彼は怒り心頭に発した」などの形です。 - 「〜に+怒り心頭に発する」
前の「〜に」で、激しい怒りの原因となった行為や出来事を示します。「無責任な対応に怒り心頭に発する」「度重なる失言に怒り心頭に発した」などと使います。 - 「怒り心頭に発して+〜」
激しく怒った後の言動へ続ける形です。「怒り心頭に発して抗議する」「怒り心頭に発して席を立つ」などと続けます。 - 「怒り心頭に発した+人」
連体形にして、怒っている人物を修飾できます。「怒り心頭に発した父」「怒り心頭に発した監督」などの形です。
「怒り心頭に発する」の例文
- 事実と異なる報告書を読んだ部長は、怒り心頭に発して担当者に詳しい説明を求めました。
- 審判の判定に納得できなかった監督は怒り心頭に発したものの、選手たちの前では冷静さを保ちました。
- 何の説明もなく計画が変更されたことに住民たちは怒り心頭に発し、市へ公開質問状を提出しました。
「怒り心頭に発する」の類似表現
腸が煮えくり返る(はらわたがにえくりかえる)
非常に腹が立つことを表す点では近い表現です。
「腸が煮えくり返る」は、怒りを腹の中で煮え立つものにたとえた言い方で、表面には出していなくても激しく憤っている気持ちを表せます。
堪忍袋の緒が切れる(かんにんぶくろのおがきれる)
我慢を重ねた末に、ついに耐えられなくなって怒り出すことをいいます。
怒りの強さだけでなく、それまで耐えていたという過程を含む点が特徴です。
「怒り心頭に発する」に含まれる「心頭」の意味
「心頭」は、「心、心の中」という意味です。
「頭」という字が含まれていますが、ここで人間の頭部を指しているわけではなく、古くは「胸のあたり」「念頭」などの意味でも使われてきました。
「怒り心頭に発する」の古い用例
文化3年(1806)刊の式亭三馬作『雷太郎強悪物語』には、「いかりしんとうにおこりて」という言い回しが見られます。
「発する」ではなく「おこる」が使われており、19世紀初めにはすでに「怒り」と「心頭」を結び付けた表現が用いられていました。
松本清張『影の車』(1961年)には、「怒り心頭に発したようになって」という、現在と同じ「発する」を用いた言い回しがあります。
この時代には、現代とほぼ同じ言い方で使われています。
「怒り心頭に発する」の間違いやすい使い方・表記
「怒り心頭に達する」とする言い方が広く使われていますが、本来の形は「怒り心頭に発する」です。
文化庁の平成24年度「国語に関する世論調査」では、「怒り心頭に達する」を使うと答えた人が67.1%、「怒り心頭に発する」は23.6%でした。
文化庁は「発する」を本来の言い方、「達する」を本来の言い方ではない形として扱っています。
「怒りが頂点に達する」であれば「達する」を使えますが、「怒り心頭」と組み合わせる場合は「発する」とします。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「怒り心頭に発する」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「心頭」「怒心頭に発する」項。
- 文化庁『平成24年度「国語に関する世論調査」の結果の概要』。
