読み方:ねがってもない

「願ってもない」の意味

望んでも簡単にはかなわないほど好都合なことが、運よく実現することです。

思いがけず恵まれた機会や条件を得たときの、うれしさやありがたさを含んで使われます。

「願ってもない」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「願ってもない+名詞」
    「機会」「好機」「話」「申し出」など、好都合な物事を表す名詞につなげます。「願ってもない機会」「願ってもない申し出」などの形です。
  • 「〜にとって願ってもない+名詞」
    誰にとって好都合なのかを「にとって」で示します。「私にとって願ってもない話」「会社にとって願ってもない条件」などと使います。
  • 「〜なら願ってもない」
    提示された条件や申し出を受けて、それが非常に好都合であることを述べる形です。「手伝ってくれるなら願ってもない」「その条件なら願ってもない」などと使います。

「願ってもない」の例文

  • あこがれていた作家から直接指導を受けられるとは、私にとって願ってもない機会だった。
  • 会社の移転先を探していたところ、駅前の空き物件を紹介され、願ってもない話だと思った。
  • 人手不足で困っている店に経験者が週末だけでも来てくれるというので、それなら願ってもないと店長は喜んだ。

「願ってもない」の類似表現

願ったり叶ったり(ねがったりかなったり)

希望していたことと実際の状況がぴったり一致することをいいます。

「願ったり叶ったりの条件」「それなら願ったり叶ったりだ」のように使えます。

「願ってもない」は、簡単には望めないほど恵まれた機会や出来事が実現した場合に使いやすく、「願ったり叶ったり」は、自分の希望どおりになったことを直接表す言い方です。

渡りに船(わたりにふね)

必要としていたものや条件が、ちょうどよい時に現れることを表します。

「渡りに船の申し出」のように使います。

「願ってもない」ほど望みの実現しにくさを含まず、必要な時に都合よく条件がそろったことを表す場合に適しています。

「願ってもない」の古い用例

1698年ごろの浄瑠璃『十二段』第四には、「ねがふてもない事」という形が使われています。

「願う」が古風な書き表し方の「ねがふ」と表記されており、江戸時代にはすでに「願ってもない」に当たる表現が用いられていました。

「願ってもない」の間違いやすい使い方・表記

「願ってもない」の「ない」を「願っていない」という意味に取らないよう注意が必要です。

たとえば「願ってもない機会」は、「望んでいなかった機会」ではありません。

「望んだとしても簡単には得られないほど恵まれた機会」という意味です。

表記には「願ってもない」のほか、「願っても無い」も見られます。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「願ってもない」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「願てもない」項。
ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。