抜きつ抜かれつ
読み方:ぬきつぬかれつ
「抜きつ抜かれつ」の意味
互いに追い越したり追い越されたりして、激しく先を争う様子をいいます。
どちらか一方が優勢なままではなく、前後や順位が何度も入れ替わる接戦を表す言葉です。
「抜きつ抜かれつ」の語源・由来
「抜きつ」の「抜き」は「抜く」の連用形で、ここでは「先にいる相手を追い越して前に出る」という意味です。
「抜かれ」は「抜く」の受け身である「抜かれる」の連用形です。
二つの「つ」は、古語の完了の助動詞「つ」から続く言い回しです。
「…つ…つ」の形で、二つの動作が交互に行われることを表す言い方は、中世の文献にも見られ、「行きつ戻りつ」などとともに現代まで残っている言い回しです。
「抜きつ抜かれつ」は、この「…つ…つ」の型によって、相手を抜くことと相手に抜かれることが交互に繰り返される状態を表したものです。
「抜きつ抜かれつ」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「抜きつ抜かれつの〜」
後ろに「接戦」「競争」「首位争い」「展開」など、競い合う状況を表す名詞を続けます。「抜きつ抜かれつの接戦」「抜きつ抜かれつの首位争い」などの形です。 - 「〜と抜きつ抜かれつする」
「と」で競争相手を示し、互いに順位を入れ替えることを表します。「ライバルと抜きつ抜かれつする」「友人と抜きつ抜かれつする」などと使います。 - 「抜きつ抜かれつで〜」
競り合っている状態を受けて、その後の様子を述べる形です。「抜きつ抜かれつで競り合う」「抜きつ抜かれつで首位が変わる」などと続けます。
「抜きつ抜かれつ」の例文
- 先頭の二人は終盤まで抜きつ抜かれつの接戦を繰り広げ、最後の直線で勝負が決まった。
- 両社の国内シェアは数年にわたって抜きつ抜かれつで、首位がたびたび入れ替わっている。
- 模試の順位では友人と抜きつ抜かれつしてきたが、今回は私が一歩先に出た。
「抜きつ抜かれつ」の類似表現
追いつ追われつ(おいつおわれつ)
追いかけたり追いかけられたりする様子を表し、「抜きつ抜かれつ」と多くの場面で言い換えられます。
「抜きつ抜かれつ」は、実際に相手を追い越して前後が入れ替わることを直接表すのに対し、「追いつ追われつ」は追う側と追われる側が入れ替わることを表します。
一進一退(いっしんいったい)
状況が進んだり後退したりして、なかなか決着しないことを表します。
競争だけでなく、試合の攻防や病状、交渉などにも使えるため、「抜きつ抜かれつ」より使用できる対象が広い表現です。
「抜きつ抜かれつ」の古い用例
1966年9月発行の『地球科学』第85・86号には、山田直利の論文に続く「質疑」が掲載されています。
そこで湊正雄は、「領家帯とのぬきつぬかれつの関係」と述べています。
表記は漢字を使わない「ぬきつぬかれつ」です。
ここでは競走で相手を追い越すことではなく、地質学上の二つの地域の関係をたとえて用いています。
1966年には、実際のレース以外にも、優勢となる側が入れ替わる関係を表す比喩として使われていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「抜きつ抜かれつ」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「つ」「抜く」項。
- 山田直利「西南日本およびその周辺地区における後期中生代火成活動の性格」『地球科学』第85・86号、1966年9月。
