埒も無い
読み方:らちもない
「埒も無い」の意味
とりとめがなく、つまらないことや、筋道が立たずばかばかしいことをいいます。
話や考え、言い分などにまとまりがない場合のほか、内容に大した意味や価値がない場合にも使われます。
「埒も無い」の語源・由来
「埒も無い」の語源は一説に定まっていません。
「臈次(らっし)も無い」が変化して「埒も無い」になったとする説があります。
「臈次」は順序や次第を表す言葉で、「臈次も無い」も、秩序や順序が整っていないことをいう表現でした。
これとは別に、「埒」をもとに直接生まれた表現とみる説もあります。
近世には「らっしもない」「らっちもない」「らちもない」などの近い言い方が使われており、互いに影響して成立した可能性も考えられています。
「埒も無い」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「埒も無い〜」
後ろに「話」「こと」「考え」「うわさ」などの名詞を置きます。「埒も無い話」「埒も無いこと」などの形です。 - 「〜は埒も無い」
話や議論、言い分などを主題にして、その内容を評する形です。「そんな議論は埒も無い」「その言い分は埒も無い」などと使います。 - 「埒も無く〜」
「無い」を連用形の「無く」にして、後ろの動作を修飾します。「埒も無く笑う」「埒も無くしゃべる」などの形です。「埒も無く笑いころげる」という言葉も辞書に見られます。
「埒も無い」の例文
- 久しぶりに会った友人と埒も無い話をしているうちに、あっという間に夕方になった。
- そんな埒も無い理屈をいくら並べても、周囲を納得させることはできないだろう。
- 子どもたちは落ち葉を投げ合いながら、埒も無く笑いころげていた。
「埒も無い」の類似表現
他愛もない(たあいもない)
「他愛もない」は、深い意味がなく、取るに足りない話や出来事などによく使われます。
「他愛もない話」のように、親しい人との気軽な会話を表す場合には、必ずしも悪い意味になりません。
「埒も無い」には、筋道が立たない、ばかばかしいという批判的なニュアンスを伴う使われ方もあります。
益体もない(やくたいもない)
「益体もない」は、役に立たない、無益であるという意味合いで使われます。
「益体もないこと」「益体もない議論」など、価値や有用性のなさを問題にするときに適した表現です。
「埒も無い」の古い用例
近松門左衛門の浄瑠璃『出世景清』(1685年)には、「はてらちもない事」という記述があります。
死んだはずの景清が生き返るはずはないという発言の中で使われており、筋道が立たず、ばかばかしいという意味の使われ方が、17世紀後半にはすでにされていました。
国木田独歩『竹の木戸』(1908年)では、二人が本題を離れて「ぺちゃくちゃと仲善く喋舌り合って居たところで埒も無い」とあります。
ここでは、とりとめのないおしゃべりを指しており、現在の「埒も無い話」に近い使い方です。
「埒も無い」の間違いやすい使い方・表記
「埒も無い」と「埒が明かない」は意味が異なります。
「埒が明かない」は、物事が進展せず決着がつかないことをいい、「何度話し合っても埒が明かない」のように使います。
「埒も無い話」は、話がとりとめなく、つまらないことを指しますが、「話し合いが進まない」という意味で「埒も無い」を使うのは適切ではありません。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「埒も無い」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「埒も無い」「臈次も無い」項。
- 国木田独歩『竹の木戸』1908年。
