いい年をして
読み方:いいとしをして
「いい年をして」の意味
十分に分別があるはずの年齢なのに、その年齢にふさわしくない言動をすることを非難したり、あきれたりして言う表現です。
相手をとがめる響きを持つことが多く、自分について使えば自嘲や照れを表すこともあります。
「いい年」は、物事の分別がついていて当然と考えられる年齢を指します。
「いい年をして」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「いい年をして、〜」
後ろに、その年齢には似つかわしくないと話し手が考える行動や状態を続けます。「いい年をして駄々をこねる」「いい年をして親に甘える」などの形です。 - 「いい年をしてまだ〜」
「まだ」を加え、すでに卒業していて当然だと考える行動や状態が続いていることをとがめます。「いい年をしてまだけんかばかりする」「いい年をしてまだ人任せだ」などと使います。 - 「いい年をして〜なんて/〜とは」
「なんて」「とは」を後ろに置くと、驚きやあきれた気持ちが強く出ます。「いい年をして、そんなことで泣くなんて」「いい年をしてそんな態度を取るとは」などの形です。
「いい年をして」の例文
- 弟はもう社会人なのに、いい年をして母に朝起こしてもらっている。
- 私もいい年をして、初めて一人で舞台に立つ前は緊張で手が震えてしまった。
- いい年をして人の失敗を面白がるなんて、あまり感心できる態度ではない。
「いい年をして」の類似表現
年甲斐もない(としがいもない)
意味の重なる部分が大きい表現です。
「年甲斐もなくはしゃぐ」「年甲斐もないことをする」のように、「年甲斐もなく」という副詞的な形や「年甲斐もない+名詞」の形でも使えます。
「いい年をして」は「〜であるのに」という前置きの形で後ろの行動につなげるのが基本です。
大人げない(おとなげない)
実際の年齢そのものより、振る舞いに大人らしい分別や落ち着きがないことを評する言葉です。
「いい年をして」は、相手が一定の年齢に達していることを持ち出して非難する言い方になります。
「いい年をして」に含まれる言葉の意味
ここでの「いい」は、単純に「良い」「好ましい」という意味ではありません。
「いい年」で「十分な年齢」「相当な年齢」という意味になり、「いい年をして」の言い方は皮肉や非難を伴う表現です。
「いい気味だ」「いいざまだ」などと同じく、「いい」が皮肉を含む例の一つです。
「いい年をして」の古い用例
三遊亭円朝の『松と藤芸妓の替紋』には、「好い年をして芸者の身請を致して」という言い方があります。
同作は酒井昇造の速記による作品で、1890年(明治23年)1月29日出版の書誌が残っています。
明治時代にはすでに「好い年をして」という形が、年齢にふさわしくないと見なされる行動をとがめる言い方として使われていたことが分かります。
「いい年をして」の間違いやすい使い方・表記
「いい年をして」は、年齢を基準に相手の行動を評価する表現なので、本人に直接向けると強い非難や侮辱に聞こえることがあります。
特に趣味、結婚、服装、生き方など、年齢による決まった基準がない事柄について使う場合は注意が必要です。
表記には「いい年をして」のほか「いい歳をして」もあります。
辞書類では「好い年」という表記も示されていますが、一般の文章では平仮名を交えた「いい年をして」が使いやすい形です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「いい年をして」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
- 三遊亭円朝『松と藤芸妓の替紋』、酒井昇造速記、1890年(明治23年)刊。
