読み方: えたいのしれない
意味: 人や物事の正体・本質がつかめず、怪しく不安に感じられること。

「得体の知れない」の意味

詳しい情報がないだけでなく、何者なのか、どのような性質を持つのか判断できないため、警戒や不気味さを覚える場合に用います。話し手の主観的な評価を含みやすく、未知であることを客観的に述べるだけの言い方ではありません。

「得体の知れない」の使い方

名詞を直接修飾する場合には、「得体の知れない人物」「得体の知れない生き物」「得体の知れない不安」のように組み合わせます。人や生き物のほか、事件、現象、感情など、正体や原因をつかみにくいものにも使えます。

文末では、「あの人物は得体が知れない」のように表現します。「得体の知れない」は名詞を修飾する形、「得体が知れない」は文を言い切る形として使い分けられます。

「得体の知れない」の例文

  • 夜の森から、得体の知れない鳴き声が聞こえてきた。
  • 新しく現れた男は経歴をほとんど明かさず、今も得体が知れない
  • 理由も分からないまま、彼女は得体の知れない不安に襲われた。

「得体の知れない」の類似表現

正体不明

「正体不明」は、身元や本来の姿が明らかでない状態を比較的客観的に示します。「正体不明の飛行物体」のように、何であるか確認できていないものにも使えます。

「得体の知れない」には、正体がつかめないことに加え、その対象を怪しんだり警戒したりする気持ちがにじみます。

不可解

「不可解」は、行動や現象の理由、説明の筋道などが理解できないときに用います。「不可解な行動」であれば、その行動を取った意図が分からないという意味です。

人物や物事そのものの正体をつかめず、不気味に感じる場面では、「得体の知れない」と区別できます。

「得体」とはどのような意味?

「得体」は、物事の本質、実態、正体を指す名詞です。現代では単独で用いることは少なく、主に「得体が知れない」「得体が分からない」の形で使われます。

「得体の知れない」の語源・成り立ち

「得体」の語源は、一つの説に定まっていません。

一つは、「為体」から転じたとする説です。はっきりした形や実態を成すものがつかめないことから、「得体が知れない」という表現が生まれたと説明されます。

もう一つは、僧侶の衣を指す「衣体」に由来する説です。僧侶の宗派や格式は衣の色から見分けられましたが、それを判断できない衣を着ている状態を「衣体が知れない」といったことから転じたとされます。どちらも語源説であり、一方に確定しているわけではありません。

「得体の知れない」の古い用例

明治4~5年(1871~1872年)に刊行された仮名垣魯文の『安愚楽鍋』には、「ゑたいもしれない遠人」という用例があります。現在の「得体も知れない」に当たる表記で、どのような人物か分からない相手を修飾しています。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「得体の知れない」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「得体」項。
  • 集英社『ルーツでなるほど慣用句辞典』「得体が知れない」項。

ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。