いい気なものだ|意味・使い方・例文
読み方: いいきなものだ
意味: 周囲の事情や他人の苦労を考えず、自分だけが満足したり得意になったりしている人を、あきれや非難を込めていう言葉。
「いい気なものだ」の意味
「いい気なものだ」には、相手が自分の欠点や置かれている状況に気づかず、ひとりよがりに満足しているという見方が含まれます。
「楽しそうでよい」というほめ言葉ではありません。「こちらの苦労も知らず、よく平気でいられるものだ」という反感やあきれを表す、否定的な言い方です。話し方によっては、皮肉や嫌みも強く伝わります。
「いい気なものだ」の使い方
相手の身勝手な態度、無責任な発言、ひとりよがりな考え方などを批判するときに使います。
「人の苦労も知らないで、いい気なものだ」「何も手伝わなかったのに、自分の手柄のように話すとは、いい気なものだ」のように、非難する理由を前に置く形がよく見られます。
特定の人について述べる場合には、「彼もいい気なものだ」「本人はいい気なものだ」のように表現できます。「いい気なもんだ」は「ものだ」を縮めた、よりくだけた言い方です。
相手に直接言うと、責める気持ちがはっきり伝わります。目上の人や改まった場面では避け、「周囲の事情を十分に理解していないようです」などと言い換えたほうが穏やかです。
「いい気なものだ」の例文
- みんなが後片づけをしているのに、自分だけ先に帰るなんて、いい気なものだ。
- 計画には何も協力しなかった彼が、成功を自分の手柄のように語るとは、いい気なものだ。
- 家族が心配しているのも知らず、本人は旅行気分でいるのだから、いい気なものです。
「いい気なものだ」の類似表現
いい気になる
「いい気になる」は、ほめられたり物事がうまく進んだりして、自分に満足し、うぬぼれた状態になることを表します。「少し成功したからといって、いい気になるな」のように使います。
「いい気なものだ」が相手の態度に対する話し手の評価であるのに対し、「いい気になる」は、本人が得意になった状態や、その状態へ変化することに重点があります。
のんきなものだ
「のんきなものだ」は、差し迫った問題があるのに、心配せず気楽にしている人を批判するときに使われます。
「のんき」は、心配や苦労を感じていない様子に重点があります。一方、「いい気なものだ」には、自分だけが満足し、他人の事情を気にしていないという非難が加わります。
「いい気」とはどのような意味?
ここでの「いい気」は、単に気分がよいことを指す言葉ではありません。自分の欠点や他人の事情に気づかないまま、自分だけが満足し、得意になっている状態を表します。
「いい気なものだ」の「いい」は、相手の状態をよいものとして認めているのではなく、「ずいぶん都合よく考えているものだ」という皮肉を含んでいます。
「いい気なものだ」の古い用例
「いい気」という言葉は、江戸時代後期の滑稽本『寒紅丑日待』に、「いいきなことをぬかしやあがるも」という形で見られます。相手の身勝手な発言を非難する使われ方であり、現在の「いい気なことを言う」に近い表現です。
森鷗外の小説『雁』では、夫の身勝手な考えに腹を立てた妻のお常が、「まあ、好い気な物ね」と言っています。この部分が発表されたのは1912年で、現在と同じく、自分の都合ばかり考えている相手へのあきれや非難を表しています。
「いい気なものだ」の表記
「いい気なものだ」は、「好い気なものだ」と漢字で書くこともあります。森鷗外の『雁』でも「好い気な物ね」と表記されています。一般向けの文章では、読みやすい「いい気なものだ」と書いて問題ありません。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「いい気なものだ」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「好い気」項。
- 森鷗外『雁』新潮文庫、新潮社、1948年。