胡坐をかく|意味・使い方・例文
読み方: あぐらをかく
意味: 足を組んで楽に座ること。また、安定した立場や状態に甘えて、努力をせず気楽に構えること。
「胡坐をかく」の意味
「胡坐をかく」は、もともと、両膝を左右に開き、両足を組んで座る姿勢を指します。
ここから意味が広がり、現在では、恵まれた地位や過去の実績などを頼りにして、努力や改善を怠る態度も表します。
「自分の立場は簡単には揺らがない」と安心し、いい気になっている様子への批判を含む表現です。
「胡坐をかく」の使い方
実際の座り方を表す場合は、「畳に胡坐をかく」「床に胡坐をかいて座る」のように使います。
比喩として使う場合は、頼りにしている立場や条件を「に」で示し、「地位に胡坐をかく」「人気に胡坐をかく」「過去の実績に胡坐をかく」などと表現します。「名門意識の上に胡坐をかく」のように、「~の上に胡坐をかく」という形も使われます。
人だけでなく、「会社が業界首位の座に胡坐をかく」のように、企業や組織の姿勢を批判するときにも使えます。
努力を続けていることを強調する場合には、「胡坐をかくことなく」「胡坐をかかずに」という否定の形がよく用いられます。
「胡坐をかく」の例文
- 祖父は囲炉裏の前に胡坐をかき、昔の暮らしについて話し始めました。
- 長年の業界首位に胡坐をかいた会社は、商品の改良が遅れてしまいました。
- 彼女は大会優勝の実績に胡坐をかくことなく、翌日から練習を再開しました。
「胡坐をかく」の類似表現
安住する
「安住する」は、現在の地位や境遇に満足し、それ以上を望まないことを表します。「現在の地位に安住する」のように使い、「胡坐をかく」と同じく、向上心を失った態度への批判を込めることができます。
ただし、「安住の地」のように、落ち着いて暮らすという好ましい意味でも使われます。「胡坐をかく」は、努力を怠っているという否定的な意味が強く、好ましい状態には使いません。
慢心する
「慢心する」は、自分の能力や成功を過大に評価し、おごり高ぶることに重点があります。
一方、「胡坐をかく」は、恵まれた立場や過去の実績を頼りにして、努力や改善をやめてしまう態度に重点があります。「成功して慢心する」と「成功に胡坐をかく」では、前者は心のおごり、後者はその成功に甘える姿勢を強く表します。
「あぐら」とはどのような意味?
「あぐら」は、「足」を表す「ア」と、座る場所を表す「クラ」から成る言葉と考えられています。
古くは、現在のような座り方ではなく、身分の高い人が座る床の高い台を指しました。『古事記』にも「阿具良」という形で用例が見られます。その後、腰掛けや高い場所へ上るための足場も指すようになり、のちに両足を組んで座る姿勢を表すようになりました。
「胡坐をかく」の成り立ち
胡坐は、正座よりも体を楽にして座れる姿勢です。そのため、何もせず気楽に構えている様子にたとえられ、地位や実績に甘えて努力しないという意味が生まれました。
「胡坐をかく」という形そのものは、室町時代末から近世初期に成立したとみられる虎明本狂言『察化』に見られます。この用例では、足を組んで座るという本来の意味で使われています。
「胡坐をかく」の古い用例
夏目漱石の小説『坑夫』には、「腹の中はけっして胡坐をかくほど悠長ではなかった」という表現があります。実際には胡坐に座り直しながらも、心の中は落ち着いていなかったという場面です。胡坐が、ゆったりと気楽に構える姿勢と結び付けられていたことが伝わります。
1946年に発表された小田切秀雄の評論「新文学創造の主体」には、「実感の上にあぐらをかく」という用例が見られます。すでに得た実感だけに頼り、新たな創造へ進もうとしない態度を批判したもので、現在の比喩的な意味とほぼ同じ使われ方です。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「胡坐をかく」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「胡坐をかく」「胡床・胡坐」項。
- 夏目漱石『坑夫』「夏目漱石全集4」ちくま文庫、筑摩書房、1988年。