勿体を付ける
読み方:もったいをつける
「勿体を付ける」の意味
必要以上に重々しく振る舞ったり、いかにも重要そうに見せたりすることです。
威厳があるように装う態度をいい、「もったいぶる」とほぼ同じ意味で使われます。
話や品物などをすぐに示さず、意味ありげに扱って相手の関心を引く場面にも使われ、多くの場合、わざとらしさや大げささを感じている側から使う表現です。
「勿体を付ける」の語源・由来
「勿体」は、近世には「外見や態度の重々しさ」「ものものしい様子」を表す名詞として使われ、さらに人の態度や品格、物の品位を指すこともありました。
「勿体を付ける」は、この「勿体」に動詞の「付ける」が結び付いた表現です。
「勿体ない」は中世から記述がありますが、「勿体」が単独の名詞として用いられる例は近世になって現れたとされています。
「勿体を付ける」も近世の文献にすでに見られます。
「勿体を付ける」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「勿体を付けて〜する」
「話す」「発表する」「差し出す」などの動作につなげ、その行為をわざと重々しく行う様子を表します。「勿体を付けて話す」「勿体を付けて箱を開ける」などの形です。 - 「勿体を付けずに〜する」
否定の「ずに」を使い、重々しく構えないで早く本題に入るよう求める場面などでよく使われます。「勿体を付けずに答える」「勿体を付けずに教える」などと続けます。 - 「勿体を付けた〜」
後ろに「言い方」「口調」「話し方」などの名詞を置き、その人の振る舞い方を説明します。「勿体を付けた言い方」「勿体を付けた口調」などの形です。
「勿体を付ける」の例文
- 司会者は結果をすぐには発表せず、散々勿体を付けてから優勝者の名前を読み上げました。
- 「そんなに勿体を付けずに、何があったのか先に話してくれ」と父にせかされました。
- 彼は小さな封筒を机の上に置き、勿体を付けた口調で「ここに答えが入っています」と告げました。
「勿体を付ける」の類似表現
勿体ぶる(もったいぶる)
「勿体を付ける」と意味はほぼ同じで、多くの場面で言い換えられます。
「勿体ぶって話す」「勿体ぶった言い方」のように、ひとつの動詞として使えるため、「勿体を付ける」より広く手軽に使えます。
気取る(きどる)
「気取る」は、自分を実際以上によく見せようとしたり、しゃれた様子や上品な様子を装ったりする場合に広く使えます。
「勿体を付ける」は、特に重々しさや大げさな扱い方が目立つ場合に適しています。
「勿体を付ける」の古い用例
万治3年(1660年)出版の役者評判記『野郎虫』には、「もったいをつけるとすれ共」という言い回しが見られます。
『精選版 日本国語大辞典』では「勿体を付ける」が初めて世に出た例として掲げられており、17世紀半ばには現在と同じ「勿体を付ける」という言い方が使われていました。
『野郎虫』は京都で出版された役者評判記で、当時の歌舞伎役者について記した資料です。
この用例では、いかにもものものしく見せようとする態度について「もったいをつける」と表現されています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「勿体を付ける」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「勿体」「勿体を付ける」項。
- 立命館大学アート・リサーチセンター「立命館大学所蔵貴重書アーカイブ 日本文学・芸術篇」『野郎虫』。
