涼しい顔
読み方:すずしいかお
「涼しい顔」の意味
自分にも関係があることなのに、まるで他人事であるかのように知らん顔をしている様子をいいます。
自分の責任や関わりを表に出さず、平然としている人を批判的にいうことが多い表現です。
「涼しい顔」の使い方
「涼しい顔」は、「する」「している」などを伴う形のほか、後ろの動作を修飾する「涼しい顔で〜」もよく使われます。
次のような型がよく使われます。
- 「涼しい顔をする」
問題に関わっている人が知らないふりをする様子を述べる形です。「当事者が涼しい顔をする」「本人だけ涼しい顔をする」などと使います。 - 「涼しい顔をしている」
そのような態度が続いていることを表します。「責任者が涼しい顔をしている」「原因を作った本人が涼しい顔をしている」などの形です。 - 「〜のに、涼しい顔をして〜」
本人の関わりと実際の態度との食い違いを示しやすい形です。「事情を知っているのに、涼しい顔をして黙っている」「迷惑を掛けたのに、涼しい顔をして帰る」などと続けます。 - 「涼しい顔で〜」
後ろに動作を続けます。「涼しい顔で席に戻る」「涼しい顔で責任を否定する」などの形です。
「涼しい顔」の例文
- ミスの原因を作った本人が、会議では涼しい顔をして責任はないと言っている。
- 弟は花瓶を割ったことを知っているはずなのに、母に尋ねられると涼しい顔で本を読み続けた。
- 不正な処理に関わった担当者が、問題が明るみに出たあとも涼しい顔をしているので、周囲から厳しく批判された。
「涼しい顔」の類似表現
知らん顔(しらんかお)
「知らん顔」は、知らないふりや知らんぷりをすることを広くいいます。
人から声を掛けられて無視する場合にも「あいさつしても知らん顔をされた」のように使えるため、自分がその問題に関係しているかどうかは関係ありません。
何食わぬ顔(なにくわぬかお)
「何食わぬ顔」は、自分がしたことや心の中で思っていることを隠し、何も知らない、何も関係がないという顔をすることです。
「何食わぬ顔で帰宅する」など、何かを隠して平然と振る舞う場面によく合います。
「涼しい顔」の古い用例
芥川龍之介の『魚河岸』には、大正11年(1922年)に「露柴は涼しい顔をしながら、猪口を口へ持って行った」という記述があります。
「涼しい顔をしながら」という、現在にも通じる形で使われています。
寺田寅彦は昭和8年(1933年)の随筆『涼味数題』で「涼しい顔」を取り上げ、収賄の嫌疑を受けながら平然としている人物だけでなく、自分の失敗に気付かず平気でいる人物なども例に挙げています。
当時すでに、「自分に関わる問題があっても平然としている」という意味だけでなく、単に何事もないような顔をしている場合にも使われていたことが分かります。
「涼しい顔」の間違いやすい使い方
「涼しい顔をする」を、「大変な状況に置かれていても平気そうにする」という意味だけで理解している人がけっこう多いです。
文化庁の令和4年度「国語に関する世論調査」では、「大変な状況でも平気そうにする」を選んだ人が61.0%だったのに対し、辞書などで主に本来の意味とされてきた「関係があるのに知らんぷりする」を選んだ人は22.9%でした。
「難しい仕事を涼しい顔でやってのけた」のような、「苦労を感じさせず平然としている」という使い方も実際には広く見られます。
ただし、慣用句としての伝統的な本来の正しい意味を問われる場合は、「自分にも関係があるのに知らんぷりをする」という意味と区別しておく必要があります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「涼しい顔」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
- 文化庁『令和4年度「国語に関する世論調査」の結果の概要』2023年。
- 芥川龍之介「魚河岸」『芥川龍之介全集5』筑摩書房、1987年。作品発表1922年。
- 寺田寅彦「涼味数題」『寺田寅彦随筆集 第四巻』岩波書店、1948年。初出『週刊朝日』1933年8月。
