采配を揮う
読み方:さいはいをふるう
「采配を揮う」の意味
集団や組織、仕事などの先頭に立ち、人に指図をして全体を動かすことです。
スポーツの監督、組織の責任者、事業を取り仕切る人など、複数の人をまとめて指揮・運営する立場について使われます。
『精選版 日本国語大辞典』では、「采配を振る」の形とともに「振るう」も掲げられています。
「采配を揮う」の語源・由来
「采配」は、もともと軍陣で大将などが指揮のために使った道具です。
柄の先に細く切った紙などを房状に付けたもので、遠くにいる兵への合図や命令の伝達に用いられました。
指揮官が采配を振って合図したことから、「采配を振る」が指揮・運営をする意味で使われるようになりました。
「采配を揮う」の「揮う」は「ふるう」と読み、物を思うままに扱ったり、棒状のものを動かして使ったりする意味を持ちます。
もともとの「采配を振る」に、音と意味の近い「ふるう」が用いられるようになり、「采配を振るう」「采配を揮う」という形も広がりました。
「采配を揮う」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜が采配を揮う」
「〜」には、組織や集団を指揮する人物や役職が入ります。「監督が采配を揮う」「現場責任者が采配を揮う」などの形です。 - 「〜で采配を揮う」
「〜で」には、指揮する場所や場面が入ります。「決勝戦で采配を揮う」「再建の現場で采配を揮う」などと使います。 - 「采配を揮って〜」
後ろに、指揮した結果として行うことを続けます。「采配を揮って部下を動かす」「采配を揮って混乱を収める」などの形です。 - 「采配を揮っている/采配を揮った」
継続中の指揮には「揮っている」、過去の指揮には「揮った」を使えます。「長年采配を揮っている」「大会で采配を揮った」などとします。
「采配を揮う」の例文
- 新監督は若手を積極的に起用し、初めての全国大会で采配を揮った。
- 災害対応の現場では、経験豊富な責任者が采配を揮い、各班の役割をすばやく決めた。
- 創業者が引退してからは、後継者が経営の采配を揮っている。
「采配を揮う」の類似表現
采配を取る(さいはいをとる)
意味はほぼ同じで、多くの場面で言い換えられます。
「責任者が采配を取る」「現場の采配を取る」などの形で、指揮や取りまとめを担当することを表します。
「采配を取る」も、実物の采配を持つ指揮官の姿から生まれた表現です。
指揮を執る(しきをとる)
「指揮を執る」は、人に指示を出して全体を動かすことを広く表せます。
軍隊やスポーツ、工事、演奏などにも使われ、「采配」という歴史的な指揮具のイメージを伴いません。
「采配を揮う」の古い用例
1935年(昭和10年)1月に初出した野村胡堂『銭形平次捕物控 八人芸の女』には、呉服屋の番頭について「内外一切の采配を揮っている」という表現があります。
ここでは戦場で実物の采配を振っているのではなく、番頭が店の仕事を広く取り仕切っていることを指しています。
昭和10年には、「揮う」という表記で現在と同じ比喩的な言い回しが見られます。
「采配を揮う」の間違いやすい使い方・表記
古くからの形は「采配を振る」です。
文化庁の「国語に関する世論調査」でも、「采配を振る」が本来の言い方として扱われています。
ただし、「采配を振るう」も広く使われており、『精選版 日本国語大辞典』では「采配を振る」の異形として「振るう」を掲げています。
さらに、昭和期の文学には「采配を揮う」の表記も実際に見受けられます。
「揮う」は「ふるう」と読みます。
「采配を揮う」と「采配を振るう」は読みが同じですが、伝統的な形を用いたい場合は「采配を振る」とするのが分かりやすいでしょう。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「采配を揮う」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
- 野村胡堂『銭形平次捕物控 八人芸の女』、初出『オール讀物』文藝春秋社、1935年1月号。
- 文化庁『平成20年度「国語に関する世論調査」の結果について』。
