月と鼈
読み方:つきとすっぽん
「月と鼈」の意味
二つのものの違いが非常に大きく、比べものにならないことのたとえです。
特に、能力や価値、出来栄えなどに大きな優劣がある場合によく使われます。
人を比べる場合には、一方を低く評価する響きを伴うことがあります。
「月と鼈」の語源・由来
月とスッポンは、どちらも丸い形をしています。
しかし、空に輝く月と地上のスッポンはまったく別のものであることから、形に共通点がありながら大きな隔たりがあるものを並べるたとえになりました。
「すっぽん」はもともと「素盆(すぼん)」だったとする説もありますが、これは一説であり、一般には月とスッポンを取り合わせた表現として説明されています。
「月と鼈」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「AとBでは月と鼈だ」
比較する二つを「AとB」で示し、その差の大きさを述べる形です。「兄と私では月と鼈だ」「以前の製品と新製品では月と鼈だ」などと使います。 - 「~の~は月と鼈だ」
二つの人や物を主題として並べる形です。「二人の実力は月と鼈だ」「両社の待遇は月と鼈だ」などと使います。 - 「月と鼈ほど違う/月と鼈ほどの違い」
「ほど」を伴い、違いの程度を強調する形です。「完成度が月と鼈ほど違う」「月と鼈ほどの違いがある」などと使います。
「月と鼈」の例文
- 同じ時期に絵を始めたとはいえ、今では彼の技術と私の技術では月と鼈だ。
- 実際に両方の部屋へ泊まってみると、写真では似ていたホテルも設備の充実度は月と鼈だった。
- 去年までのチームと比べれば守備力が月と鼈ほど違い、簡単には失点しなくなった。
「月と鼈」の類似表現
雲泥の差(うんでいのさ)
「雲泥の差」は、天にある雲と地上の泥になぞらえ、二つのものの間に非常に大きな差があることをいいます。
「両者には雲泥の差がある」のように、名詞として文章に組み込みやすい表現です。
提灯に釣鐘(ちょうちんにつりがね)
提灯と釣鐘は形が似ていても、重さや価値が大きく異なることから生まれた表現です。
「月と鼈」と同じく、外形には似たところがあっても釣り合わない二つを比べる場合に使われます。
「月と鼈」の古い用例
竹田出雲作の浄瑠璃『蘆屋道満大内鑑』は享保19年(1734)に初演されました。
その第三段には「お月様と泥亀ほどちがふた」という一節があります。
「泥亀」には「すっぽん」と読みが示されており、現在の「月と鼈ほど違う」に近い言い回しが、18世紀前半にはすでに使われていました。
昭和3年(1928)刊の夏目鏡子述・松岡譲筆録『漱石の思ひ出』には、「月と鼈ほどの違い」という現在と同じ形が使われています。
この時期には、「月と鼈」に「ほどの違い」を続ける形が文献上に見られます。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「月と鼈」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「月と鼈」項。
- 北村孝一編『小学館 ことわざを知る辞典』小学館、2018年、「月と鼈」項。
- 竹田出雲『蘆屋道満大内鑑』享保19年(1734)初演。
- 夏目鏡子述・松岡譲筆録『漱石の思ひ出』改造社、1928年。
