読み方:つかずはなれず

「付かず離れず」の意味

近づきすぎることも離れすぎることもなく、一定の距離を保ちながら関係を続けるさまをいいます。

人や組織などの関係だけでなく、どちらか一方に偏らず、中立的な態度を取る場合にも使われます。

「付かず離れず」の使い方

次のような型がよく使われます。

  • 「付かず離れずの〜」
    後ろに「関係」「距離」「付き合い」などの名詞を続けます。「付かず離れずの関係」「付かず離れずの距離」などの形です。
  • 「〜と付かず離れず付き合う」
    助詞「と」で関係を保つ相手を示します。「隣人と付かず離れず付き合う」「昔の友人と付かず離れず付き合う」などと使います。
  • 「付かず離れず+動詞」
    「見守る」「寄り添う」などの動詞を修飾する形です。「付かず離れず見守る」「付かず離れず寄り添う」などと使います。

「付かず離れず」の例文

  • 独立した後も、前の会社とは付かず離れずの関係を保っている。
  • 子どもが自分で判断できるよう、親は付かず離れず見守った。
  • 委員長はどちらの派にも肩入れせず、双方と付かず離れずの立場を取っていた。

「付かず離れず」の類似表現

不即不離(ふそくふり)

意味はほぼ同じで、多くの場面で言い換えられます。

「不即不離」は漢字だけの少し硬い表現で、「不即不離の関係」「不即不離な関係」などの形で使われます。

「付かず離れず」は、「付かず離れず見守る」「付かず離れず付き合う」のように動詞を直接修飾する形でも自然に使えます。

どっちつかず

「どっちつかず」は、どちらとも決まらず、曖昧で中途半端な状態をいいます。

そのため、態度がはっきりしないことを批判的にいう場合にも使われます。

「付かず離れず」は、親しくなりすぎないよう適度な距離を保つ関係にも使えるため、「どっちつかず」のような否定的な意味になるとは限りません。

「付かず離れず」の古い用例

尾崎紅葉の『多情多恨』(1896年)には、「気にも障へさせぬやうに、即かず離れず」という一節があります。

現在使われている「付かず離れず」ではなく、「即かず離れず」と表記されています。

「即」には、ぴったりとくっつくという意味があり、この一節でも近づきすぎず離れすぎない状態を表しています。

明治29年には、現在とほぼ同じ意味で「つかず離れず」が使われていました。

参考文献・出典

  • 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
  • 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「付かず離れず」項。
  • 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「付ず離れず」項。
ABOUT ME
北澤篤史
ことわざ学会理事。ことわざ・慣用句・故事成語・四字熟語・漢字熟語を対象に、語源・由来、古い用例、文献上の変遷を研究している。2025年度ことわざ研究奨励賞受賞。著書に『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(いずれも講談社)がある。