飼い犬に手を噛まれる
読み方:かいいぬにてをかまれる
「飼い犬に手を噛まれる」の意味
日ごろから目をかけ、世話をしてきた相手に思いがけず裏切られ、害を受けることのたとえです。
単に信頼していた人に裏切られるというだけでなく、自分がかわいがったり、引き立てたり、面倒を見たりしてきた相手からひどい仕打ちを受ける場合に使います。
「飼い犬に手を噛まれる」の語源・由来
自分がかわいがって養っている犬に、かえって手を噛まれるという意外な出来事を、人間関係の裏切りにたとえた言葉です。
古くは「手飼の犬に手くわるる」「飼かう犬に手をくわるる」などとも言いました。
「手飼」は、自分の手で食べ物や水を与えて動物を養うことをいいます。
現在の「飼い犬に手を噛まれる」という形は、江戸時代中期以降に定着しました。
「飼い犬に手を噛まれる」の使い方
部下、後輩、弟子など、自分が世話をしたり引き立てたりしてきた相手から裏切られた場面で使います。
「長年育ててきた部下に飼い犬に手を噛まれた」「飼い犬に手を噛まれる思いだ」「飼い犬に手を噛まれるとはこのことだ」などの形が自然です。
人を「飼い犬」にたとえる言い方なので、相手本人に直接ぶつけると強い非難になります。
「飼い犬に手を噛まれる」の例文
- 長年育ててきた従業員に顧客情報を持ち出され、店主は飼い犬に手を噛まれた思いだった。
- ずっと面倒を見てきた後輩が陰で悪口を広めていたと知り、飼い犬に手を噛まれるとはこのことかと思った。
- 信頼して仕事を任せていた部下に会社の金を持ち逃げされ、社長は飼い犬に手を噛まれたと嘆いた。
「飼い犬に手を噛まれる」の類似表現
恩を仇で返す(おんをあだでかえす)
意味には大きく重なる部分がありますが、文の主語が異なります。
「恩を仇で返す」は、「彼は世話になった先生の恩を仇で返した」のように、恩を受けた側の行為を述べます。
「飼い犬に手を噛まれる」は、世話をした側から「私は彼に飼い犬に手を噛まれたような思いだ」と述べる形です。
後足で砂をかける(あとあしですなをかける)
世話になった人の恩義を裏切るだけでなく、去りぎわにさらに迷惑をかける場合に使います。
「飼い犬に手を噛まれる」には、相手がその場を去るという条件はありません。
「会社を辞める際に顧客を奪っていった」のような場面では、「後足で砂をかける」がよく合います。
「飼い犬に手を噛まれる」の古い用例
三島由紀夫『夜の向日葵』(1953年)には、「飼い犬に手を噛まれるって、このことだわ」という用例があります。
現在と同じ語形で、目をかけてきた相手から裏切られた場面に用いられています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「飼い犬に手を噛まれる」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年。
- 北村孝一編『小学館 ことわざを知る辞典』小学館、2018年、「飼い犬に手を噛まれる」項。
- 集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
