贔屓の引き倒し
読み方:ひいきのひきだおし
「贔屓の引き倒し」の意味
気に入った人を助けたり応援したりしすぎて、かえってその人を不利にしたり、迷惑をかけたりすることです。
たとえ善意からの行動であっても、結果が逆効果になったときに批判を込めて使います。
「贔屓の引き倒し」の語源・由来
「贔屓」は、力を尽くすことを意味した「ひき」から変化した言葉です。
そこから、気に入った人に力を貸して引き立てることを指すようになりました。
引き立てようとして力を入れすぎ、反対に引き倒してしまうという言葉の組み合わせから「贔屓の引き倒し」が生まれました。
「ひいき」と「ひきだおし」の語呂の良い組み合わせも、ことわざとしての調子を整えています。
「贔屓の引き倒し」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜は贔屓の引き倒しだ」
行きすぎた応援や特別扱いを批判するときに使います。「そこまで褒めるのは贔屓の引き倒しだ」「過剰な擁護は贔屓の引き倒しだ」などの形です。 - 「〜すると贔屓の引き倒しになる」
ある行為を続けると、かえって相手のためにならないと述べる形です。「何でもかばうと贔屓の引き倒しになる」「特別扱いを続けると贔屓の引き倒しになる」などと使います。 - 「贔屓の引き倒しになりかねない」
行きすぎた応援や肩入れが、相手に悪い結果をもたらすおそれがあると注意するときに使います。「過度な持ち上げは贔屓の引き倒しになりかねない」「一方的な擁護は贔屓の引き倒しになりかねない」などの形です。
「贔屓の引き倒し」の例文
- 選手をかばうためとはいえ、審判を罵倒しては贔屓の引き倒しだ。
- 上司が新人だけを目立つ仕事に選び続ければ、贔屓の引き倒しになりかねない。
- ファンによる過剰な宣伝が贔屓の引き倒しとなり、かえって作品への反発を招いた。
「贔屓の引き倒し」の類似表現
情けが仇(なさけがあだ)
相手を思ってした親切や援助が、かえって悪い結果を招くことです。
特定の人を優遇する行為とは限らないため、「贔屓の引き倒し」より広い場面で使えます。
過ぎたるは猶及ばざるが如し(すぎたるはなおおよばざるがごとし)
何事も度を越せば、不足するのと同じくらい結果がよくないという教えです。
行きすぎ全般を戒める言葉であり、特定の人を贔屓した結果、その人に不利益を与える場合に使うものではありません。
「贔屓の引き倒し」の古い用例
近松門左衛門の浄瑠璃『曾我会稽山』(1718年)には、「かたむくろに曾我を引、おのれは贔負の引だおし」とあります。
「贔屓」を「贔負」、「引き倒し」を「引だおし」と表記しており、18世紀初めには現在と同じ意味の表現が使われていました。
「贔屓の引き倒し」の間違いやすい読み方・表記
「引き倒し」には「ひきだおし」と「ひきたおし」の二つの読みがあります。
本記事では、江戸時代の用例に見える「引だおし」に合わせて「ひきだおし」としています。
「贔屓の引き倒れ」という異形もあります。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「贔屓の引き倒し」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』、小学館、2005~2006年、「贔屓」「贔屓の引倒し」項。
- 北村孝一編『小学館 ことわざを知る辞典』小学館、2018年、「贔屓の引き倒し」項。
