盗人猛々しい
読み方:ぬすっとたけだけしい(ぬすびとたけだけしい)
「盗人猛々しい」の意味
悪事を働いておきながら平然としていたり、とがめられると逆に居直ったりする態度を強く非難する言葉です。
実際の盗みだけでなく、不正、うそ、裏切りなど、自分に非があるのに反省せず、相手に食ってかかるような場合にも使われます。
「盗人猛々しい」の語源・由来
「猛々しい」は、古い形容詞「猛し(たけし)」を重ねて強めた言葉で、もとは勇ましい、強い、荒々しいといった意味を持っていました。
「猛々しい」には後に、悪事をしても平気でいる「ずうずうしい」「ずぶとい」という意味も生じています。
「盗人」とこの「猛々しい」が結びつき、悪いことをした者が臆するどころか強気に振る舞う姿を表す言い回しとして使われるようになりました。
江戸時代初期には、すでに「ぬす人たけだけし」という言い方が記録されています。
「盗人猛々しい」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜とは盗人猛々しい」
相手の発言や行動を取り上げて、強く非難するときに使います。「責任をこちらに押しつけるとは盗人猛々しい」「謝罪を求めるとは盗人猛々しい」などの形です。 - 「盗人猛々しい態度・言い分」
後ろに名詞を置いて、その人の振る舞いや主張を評します。「盗人猛々しい態度」「盗人猛々しい言い分」などと使います。 - 「盗人猛々しいとはこのことだ」
目の前の言動がこの言葉にぴったり当てはまると非難する形です。「まさに盗人猛々しいとはこのことだ」などと使います。
「盗人猛々しい」の例文
- 他人の企画を無断で使った本人が、こちらを盗作だと責めるとは、盗人猛々しいにもほどがある。
- 店の金を持ち出したことを問いただされても、彼は謝るどころか盗人猛々しい態度で店長を非難した。
- 規則を破った側が「処分されるのは不公平だ」と抗議するのだから、盗人猛々しいとはこのことだ。
「盗人猛々しい」の類似表現
面の皮が厚い(つらのかわがあつい)
恥ずかしいことをしても平気でいる人を表します。
「盗人猛々しい」と違い、必ずしも悪事を働いた人や、とがめられて居直る人だけに使う表現ではありません。
開き直る(ひらきなおる)
責められたり追及されたりしたとき、態度を変えて強気に出ることをいいます。
「盗人猛々しい」は、その人に非があることを前提として強く非難する言葉ですが、「開き直る」は行動そのものを表すため、使える場面が広くなります。
「盗人猛々しい」の古い用例
松江重頼編の俳諧書『毛吹草』には、1638年の序を持つ資料に「ぬす人たけだけし」という言い回しが使われています。
「盗人」と「たけだけし」が結びついた形が、江戸時代初期にはすでに使われていました。
為永春水の人情本『春色恋白波』では、1838~1841年の刊行部分に「盗人(ヌスット)猛々しい」とあり、さらに作中で「たとへ」として扱われています。
この時期には「ぬすっと」という読みの形も定着していたことが分かります。
「盗人猛々しい」の間違いやすい使い方・表記
「盗人」は「ぬすっと」と「ぬすびと」のどちらでも読まれ、「盗人猛々しい」も「ぬすっとたけだけしい」「ぬすびとたけだけしい」の両方があります。
単に態度が勇ましい人や、気が強い人を指す表現ではありません。
「盗人猛々しい」では「猛々しい」が「ずうずうしい、ずぶとい」という意味で使われています。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「盗人猛々しい」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「盗人猛猛しい」「猛猛しい」「猛し」項。
- 北村孝一編『小学館 ことわざを知る辞典』小学館、2018年、「盗人猛々しい」項。
