捨てたものではない
読み方:すてたものではない
「捨てたものではない」の意味
役に立たない、価値がないと見限るほどではなく、まだ十分な価値や見込みがあるという意味です。
初めはあまり期待していなかったものを改めて評価し、「思ったよりよい」「まだ可能性がある」と認める響きを伴うことがあります。
「捨てたものではない」の語源・由来
役に立たないものなら捨ててしまってよい、という考えを否定した表現に由来します。
「捨てる」を、単に物を廃棄することではなく、価値がないものとして見限る意味で用い、「捨てたものではない」と否定することで、評価すべき価値が残っていることを示すようになりました。
「〜ものではない」には、好ましくない内容の動詞を受け、そのように否定的に見るべきではないという判断を示す使い方があります。
「捨てたものではない」も、この使い方が慣用的に定着した表現です。
「捨てたものではない」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「〜は捨てたものではない」
「は」の前に、評価する物事や能力などを置きます。「この店の味は捨てたものではない」「彼の文章力は捨てたものではない」などの形です。 - 「〜も捨てたものではない」
「も」を使うと、低く見ていた対象について意外な価値を認める言い方になりやすくなります。「中古品も捨てたものではない」「昔の道具も捨てたものではない」などと使います。 - 「まだまだ捨てたものではない」
「まだまだ」を添え、価値や力が十分残っていることを強調します。「この機械もまだまだ捨てたものではない」「世の中もまだまだ捨てたものではない」などの形です。 - 「まんざら捨てたものではない」
「まんざら」を添えると、全面的に悪いとはいえず、むしろ評価できるという含みが出ます。「この味もまんざら捨てたものではない」「彼の案もまんざら捨てたものではない」などと使います。
会話では「捨てたものじゃない」「捨てたもんじゃない」というくだけた形も使われます。
「捨てたものではない」の例文
- 予選では苦戦したが、終盤の追い上げを見ると、このチームも捨てたものではない。
- 十年前のノートパソコンでも、文章を書く程度なら性能は捨てたものではない。
- 旅先で見知らぬ人に何度も助けられ、世の中もまだまだ捨てたものではないと思った。
「捨てたものではない」の類似表現
満更でもない(まんざらでもない)
「満更でもない」は、まったくだめというわけではなく、必ずしも悪くない、場合によってはかなりよいという評価に使えます。
「捨てたものではない」は、見限るほど価値がないわけではないという判断を表しやすいのに対し、「満更でもない」は物事の出来や結果のほか、本人が内心では嫌がっていない様子などにも使えます。
「満更でもない顔をする」とはいえますが、「捨てたものではない顔をする」とは通常いいません。
見込みがある(みこみがある)
「見込みがある」は、これから成長したり成功したりする可能性がある人や物事について使う表現です。
「捨てたものではない」は将来性だけでなく、古い物の性能や料理の味など、すでに備わっている価値を見直す場合にも使えます。
「捨てたものではない」の古い用例
『精選版 日本国語大辞典』には、若月紫蘭『東京年中行事』(1911年)から「海を控へての景色は万更捨てたものではない」という記述が収録されています。
景色を全面的に悪いものとは評価しない言い方で、現在の「捨てたものではない」とほぼ同じ使われ方です。
この記述では「まんざら」が「万更」と表記され、「捨てたものではない」と組み合わされています。
少なくとも明治時代末期には、現在につながる比喩的な表現が用いられていました。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「捨てたものではない」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「ものだ」項。
- 松村明監修『大辞泉』第二版、小学館、2012年、「捨てたものではない」項。
- 集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、1991年、「捨てたものではない」項。
