昔取った杵柄
読み方:むかしとったきねづか
「昔取った杵柄」の意味
以前に十分に練習して身につけた技能や腕前が、年月を経たあとも身についていることをいいます。
長くその技能から離れていた人が、久しぶりに行っても以前の腕前を発揮する場合によく用いられます。
「昔取った杵柄」の語源・由来
「杵柄」とは、餅つきなどに使う杵の、手で握る柄の部分です。
昔よく杵を手にしていた人なら、長い間使っていなくても、その扱い方が身についています。
そこから、かつて習熟した技能や腕前を「昔取った杵柄」とたとえるようになりました。
現在では杵そのものを使う技術だけでなく、さまざまな技能について使われる表現へと広がっています。
「昔取った杵柄」の使い方
次のような型がよく使われます。
- 「昔取った杵柄で〜」
後ろに、以前身につけた技能を発揮する行動や様子を続けます。「昔取った杵柄で包丁を握る」「昔取った杵柄で軽快に滑る」などと使います。 - 「昔取った杵柄を〜」
「生かす」「披露する」「見せる」などの動詞と結びつきます。「昔取った杵柄を生かす」「昔取った杵柄を披露する」などの形です。 - 「〜は昔取った杵柄だ」
得意だった分野を先に示して使えます。「ピアノは昔取った杵柄だ」「大工仕事なら昔取った杵柄だ」などといいます。
「昔取った杵柄」の例文
- 十年ぶりにテニスのラケットを握った父は、昔取った杵柄で鋭いサーブを次々と決めた。
- 地域の祭りでは、元料理人の祖父が昔取った杵柄を生かして大勢の料理を手際よく作ってくれた。
- 「機械の修理なら昔取った杵柄だ」と言って、彼は慣れた手つきで故障箇所を探し始めた。
「昔取った杵柄」の類似表現
腕に覚えがある(うでにおぼえがある)
自分の技量に自信があることをいいます。
以前に身につけた技能である必要はなく、現在続けている仕事や競技についても「剣道には腕に覚えがある」のように使えます。
「昔取った杵柄」は、過去に習得した技能を久しぶりに発揮するという含みがあります。
年の功(としのこう)
長い年月を生きてきたことで身についた経験や知恵を指します。
「昔取った杵柄」が特定の技能や腕前について使われるのに対し、「年の功」は判断力や知識、生活上の知恵などにも広く使えます。
「昔取った杵柄」の古い用例
江戸時代の雑俳集『柳多留』二十一篇(1786年)には、「むかしとったるきねづかでとしわすれ」という用例が掲載されています。
現在の「昔取った杵柄」よりも、「取ったる」という形になっています。
『精選版 日本国語大辞典』では、この例が初出の実例として挙げられています。
巖谷小波『こがね丸』(1891年)には、「古し取たる杵塚」という形で登場します。
「杵柄」ではなく「杵塚」と表記されている点や、「取った」ではなく「取たる」に近い言い方が使われている点が、現在の定型との違いです。
参考文献・出典
- 新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店、2018年。
- 米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年、「昔取った杵柄」項。
- 小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005~2006年、「昔とった杵柄」項。
- 北村孝一編『小学館 ことわざを知る辞典』小学館、2018年、「昔とった杵柄」項。
